研究課題/領域番号 |
20K04140
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
谷 健一郎 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 研究主幹 (70359206)
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研究分担者 |
山口 飛鳥 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (30570634)
石塚 治 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 首席研究員 (90356444)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 伊豆小笠原弧 / 南サンドイッチ弧 / 大陸性基盤 / ジルコン年代測定 |
研究実績の概要 |
本研究では海洋プレート同士の沈み込みによって形成される代表的な海洋性島弧とされてきた伊豆小笠原弧と南サンドイッチ弧の基盤に注目し、調査航海と比較研究のための陸上調査を組み合わせて島弧創成期の上盤側プレートの地殻構造とテクトニック環境を解明することを目指している。 本年度は昨年度実施した白鳳丸KH-20-6航海において、大東海嶺から採集された変成岩・超苦鉄質岩類の記載岩石学的分析を進め、本海嶺には頂部~南斜面を構成する角閃岩相の変成作用を被ったオフィオライト層序が露出しているのに対し、北斜面には緑色片岩相~緑簾石角閃岩相の結晶片岩が広域的に分布していることが明らかになった。また超苦鉄質岩に含まれるクロムスピネルの化学組成から島弧的な特徴を示すこともわかった。これらの結果は大東海嶺には伊豆小笠原弧の基盤である古フィリピン海プレートの一部を構成していた大規模な島弧変成岩コンプレックスが存在している可能性を強く示唆している。本成果については2021年12月に開催された「海と地球のシンポジウム2021」にて発表した。またフィリピン海プレート北西部を構成する海盆の年代と形成史について論文公表した。 また本年度は古フィリピン海プレートの起源を解明するために、比較研究として同時代の火成岩類が分布している可能性があるフィリピン・ミンダナオ島基盤岩類の調査を予定していたが、新型コロナウィルス感染拡大に伴う渡航制限により、実施することが出来なかった。 比較研究対象である、南サンドイッチ弧の基盤岩類については、その南方延長のスコチア海南縁部にて採集した堆積岩類のジルコンU-Pb年代測定を実施した。さらには英国南極調査所が過去に採集した南サンドイッチ弧堆積岩の年代測定も行い、その砕屑性ジルコンの年代頻度分布がスコチア海のものとよく一致することが明らかになった。本成果については論文投稿準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究申請段階で本年度調査を予定していたフィリピン・ミンダナオ島での地質調査は新型コロナウイルス感染拡大による渡航制限で実施することができなかったものの、伊豆小笠原弧の基盤を構成していた大東海嶺群について昨年度採集した基盤岩類の分析を進めることで、その地殻構成や形成史について新知見が得られた。 また昨年度同じく新型コロナウイルス感染拡大によって実施することができなかった台湾東方沖の調査航海についても今年度に募集された研究船利用公募に調査航海を提案し、台湾側カウンターパートとの事前調整も完了している。 南サンドイッチ弧については、当初計画では英国南極調査所を訪問して保管されている基盤岩類を観察・分取する予定であったが、渡航できる目途が立たなかったため、先方から送付してもらった基盤岩試料の年代測定を行うことで、比較研究も進展している。
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今後の研究の推進方策 |
フィリピン・ミンダナオ島での現地調査については、来年度に実施する方向で現地研究協力者(フィリピン大学Payot博士)と調整を進めており、研究期間内に実施することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画していたフィリピン・ミンダナオ島での地質調査が新型コロナウイルス感染拡大に伴う渡航制限により、実施できなかったため。渡航制限が緩和された次第、実施予定。
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