最終年度に実施した研究: (1)2015年伊豆小笠原海溝スロースリップイベント(2023年度秋の地震学会発表、解析継続中):2015年、小笠原海溝西側の深海底に高感度水圧計10台によるアレー観測を実施した。期間中にマグニチュードM6のプレート間地震及び非地震性高速滑りがアレー直下で発生した。今年度は、更にゆっくりとしたプレート間滑りを検出することを試みた。期待される信号の振幅が、モデル潮汐と現実からのズレや大気圧変化が深海底に及ぼす影響と同程度であるため、信号の抽出は容易でなく、スロースリップの定量化にまでは至っていない。(2)大気・海洋・深海底システムの地震・火山噴火・台風に対する応答(2024年JpGU発表予定・2023年論文公表・2023年JpGU発表及び論文投稿査読中):(2A)台風に対する応答:2015年台風14号は水圧計アレーの直上を通過したが、水圧極小は通過に伴う気圧低下の極小に2日ほど先行した。この事実を報告しメカニズムを考察した。(2B)海底火山噴火に対する応答:2022年トンガ火山噴火に伴って発生した気象津波の日本の微気圧計記録とS-Net海底水圧計記録から大気重力波とラム波とのカップリングを見出し、気象津波の励起源を示唆した。(2C)地震に対する応答(2024年秋の地震学会で発表予定)2024年能登半島地震の際に震央から300km以内の微気圧計記録から低周波限界の音波とLamb波を検出し、地震による音波・Lamb波の生成・分離過程を明らかにしつつある。
研究期間全体を通じた成果の概要: (A)スロースリップを検出する目的で水圧計記録を解析する際、潮汐だけでなく急激な大気圧変化がノイズ源となることを明らかにした。(B)地震・火山噴火・台風などの突発自然現象が引き起こす微弱な大気圧・海底水圧擾乱を抽出し、励起源や波動伝播に関する有用な情報を引き出した。
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