研究課題/領域番号 |
20K04144
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
松岡 篤 新潟大学, 自然科学系, 教授 (00183947)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 放散虫 / パンタネリウム属 / 中生代 / 化石種 / 殻孔数 / 系統進化 |
研究実績の概要 |
中生界のジュラ・白亜系境界は,GSSP(国際境界模式層断面と断面上のポイント)の確定がなされていない最後に残された系の境界である.この策定に際して,主要マーカーを何にするのかという議論が進められている.放散虫の主要マーカーとして,パンタネリウム属の種分化バイオイベントが主要マーカーとなりうるかどうかについて検討した.その結果,パンタネリウム・ランセオラからパンタネリウム・ベリアシアヌムが派生する進化的初出現バイオイベントは主要マーカーとして有効であることがわかった. 産出量の多い分類群は,その産出量に比例して形態の変異が大きくなる傾向がある.この形態多様性には個体発生を反映したものも含まれる.一般に,化石放散虫は成体形の個体からなる傾向が高いが,極めて保存状態の良いマリアナ海溝から得られた白亜紀最前期の群集には,個体発生の段階が異なる個体が含まれていると判断される.パンタネリウム属についての検討では,殻のサイズと殻の厚さには明瞭な比例関係があり,個体発生の段階の違いが認識される.個体発生の後期の段階では,表面装飾が過剰に形成される傾向があり,このことが見かけの形状を大きく変えている結果をもたらしている.化石放散虫の場合,個体発生を意識した分類はほとんど未着手であるが,パンタネリウム属だけでなく,中生代のウヌマ属やループス属放散虫についての検討を進め,パンタネリウム属で得られた結果との比較を行った. コロナ禍で外出が制限されるなかで,行動が可能であった新潟県内での野外地質調査を進めた.進化を解明するためには年代が詳細にわかっている地層からパンタネリウム属放散虫を得ることが重要である.アンモナイト化石の産出により年代が判明している糸魚川地域の菊石山周辺に露出する下部ジュラ系の来馬層群から岩石試料を採取し,放散虫化石の検出を試みた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
JAMSTECにおけるマイクロCT測定は本研究の重要な実施項目であったが,新型コロナウイルス感染症の流行の影響のため,出張が制限される状況が続き,実施することができなかった.このため,測定データの取得の面でやや進行が遅れている.しかしながら,マイクロCT測定以外の検討項目については当初の予定を越えて順調に進行している.パンタネリウムの種概念の構造を,放散虫の他種との比較を行うことで,種の認識についての一般性が高まる結果となった.成果発表については,予定されていた第16回国際放散虫研究集会が再度翌年に延期された.前年度に引き続き,発表の機会が制限されたといえる.2021年2月に開始された国際白亜系ベリアシアンワーキンググループの定期的なオンラインでの国際集会に議論の場を得て,本研究課題にかかわる発表を行うことができた.また,急遽オンラインでの開催が決定した国際地質対比計画(IGCP679)の講演会でも,本研究課題の成果を発表した.
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今後の研究の推進方策 |
JAMSTECにおけるマイクロCT測定は本研究の重要な実施項目であったが,新型コロナウイルス感染症の流行の影響で実施することができなかった.ウイズコロナの状況となり,出張の制限も緩和されたことから,2022年度にはマイクロCT測定が実施可能である.マイクロCTでの測定を研究推進の中心に据え,データの取得を進めて行く予定で合ある.成果発表を予定している第16回国際放散虫研究集会は,9月にスロベニアで現地開催されることが決定した.この国際会議だけでなく,その前の8月末にハンガリーで開催される国際ジュラ系会議においても,成果発表を行う予定である.日本古生物学会および形の科学会においては,予定通り,成果の発表を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由 コロナ禍のため国内および国外旅費を使用しなかったため. 使用計画 先送りした実験および成果発表の旅費として使用する.
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