研究課題/領域番号 |
20K04145
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
佐野 晋一 富山大学, 学術研究部都市デザイン学系, 教授 (50823259)
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研究分担者 |
伊庭 靖弘 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (80610451)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 厚歯二枚貝 / 白亜紀 / 太平洋 / 系統分類 |
研究実績の概要 |
本研究で対象とする,最も重要なタクサの一つである,フィリピン・カラモアン半島産ヒップリテス科厚歯二枚貝について,分類の検討を進めた。本種は,殻の横断面において,3本を超える数の,殻内部への殻外層の突出部を持つという特徴(multiple fold)を持つが,突出部の形状や本数などに注目すると,本タクサは,multiple foldの特徴を持つ,既知のどの属とも異なっており,新属の設立が必要であることが明らかになった。さらに,本科を特徴づける3本の突出部(“靭帯”部と,殻後背ー後部に発達する2本のピラー)の形態学的特徴や殻内での位置,殻サイズなどに注目し,multiple foldの特徴を持たない属を含めて比較した結果,カラモアン産ヒップリテス科は,multiple foldという特徴を除外すると,multiple foldの特徴を持たないHippurites属の最初期(Turonian)の種に類似することがわかった。カラモアン産ヒップリテス科の時代はCenomanian/Turonian境界付近の可能性があり,本種が,後期白亜紀後半に出現した,multiple foldの特徴を持つ,他のヒップリテス科とは異なり,ヒップリテス科の進化史の初期段階において,より原始的なタクサから派生したという仮説を提案する。また,本科の最古の化石記録とされる,Turonianの,Hippurites属とVaccinites属の種同士には形態学的特徴の類似性が認められることから,今後,カラモアン産ヒップリテス科の特徴とも比較することにより,属に分かれる前の,ヒップリテス科の仮想的な原始形態を復元することを目指す。これは,ポリコニテス科からの初期進化史を議論する上で,ヒップリテス科が獲得した形質の把握につながるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルスの感染拡大のために,令和2年度は,国内外における収蔵標本調査や野外調査・標本採集を実施することができず,予備調査時に採集した標本の観察と文献調査のみを実施した。なお,令和3年度以降の実施に向け,野外調査用具や化石クリーニング用機器,標本整理用消耗品などを購入し,準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度に,可能であれば,令和2年度にできなかった,国内外における収蔵標本調査や野外調査・標本採集などを計画に組み込んで実施し,遅れを取り戻したいと考えている。ただし,新型コロナウイルスの感染拡大や国内外でのワクチン接種の状況次第ではすぐには調査が実施できないことも予想され,その場合,順番を入れ替えて,国内や欧米での調査を先行して実施する,などの対応も検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大のために,令和2年度は,国内外における収蔵標本調査や野外調査・標本採集を実施することができなかったため。令和3年度に,可能であれば,令和2年度にできなかった,国内外における収蔵標本調査や野外調査・標本採集などを計画に組み込んで実施したいと考えている。
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