研究課題/領域番号 |
20K04151
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
近藤 康生 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (90192583)
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研究分担者 |
延原 尊美 静岡大学, 教育学部, 教授 (30262843)
西尾 嘉朗 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 准教授 (70373462)
長谷川 精 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 講師 (80551605)
池原 実 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (90335919)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 季節変動 / 更新世 / 二枚貝 / 日輪 / Amussiopecten / 殻成長 |
研究実績の概要 |
高知県安芸市に分布する穴内層上部からイタヤガイ科二枚貝Amussiopecten praesignisを採取し,酸素同位体比分析,LA-ICP-MSによる微量元素濃度のその場分析,LA-ICP-MS分析のための基礎実験,デジタルマイクロ顕微鏡を用いた微細成長線幅の計測を行った. その結果,得られた酸素同位体比プロファイルには,殻頂からの距離が64 mm,95 mm の部分を極小値とする2つの変動サイクルが認められ,これらは水温の季節変動を記録していると考えられた.1回目,2回目の日成長量の極小値付近をそれぞれS1, S2とすると,殻頂からS1までに260本,S1からS2までに192本,S2から殻縁までに74本の日輪が認められた.また,Li/Ca比は殻頂から5-40 mmの部分で最大値をとり,Ba/Ca比は殻頂からの距離が5-40 mm,53 mm,80-100 mmの部分で最大となる変動が認められた.以上のように,分析標本は約2年間の水温,日単位の殻成長,微量元素の変動を記録していることが判明した.また酸素同位体比変動の極小値と成長輪S1,S2の部分が一致することから,高水温時に殻成長が鈍化し成長輪(年輪)が形成されたことが推定される. なお,殻頂からS1間とS1からS2間の日輪数は1太陽年の太陽日数365.24より少ない.これは,殻成長が停滞し,日輪ができない季節があったことを示す.また,Li/Ca比が最大となる5-40 mm の部分と,殻頂からの距離が28 mmの部分を極大値とする殻成長の増加が一致したことから,Li/Ca比がプランクトンブルームの指標となるという,ヨーロッパに分布する現生種Pecten maximusについて提唱された説(Thebault & Chauvaud, 2013)は,本種についても一部は適合することが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定した最小限の分析は実施でき,期待した成果が得られた.また,当初の計画にはなかった関東地方の更新世のイタヤガイ科二枚貝(Pecten albicans,およびP. naganumanus)の分析も進めることができた.その一方,Covid-19の感染状況悪化のため,計画していた調査は一部未実施となり,分析標本の標本調査も行えなかった.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,穴内層の他の層準からの試料を採取するとともに,昨年度同様の分析を進め,時代的な変遷を把握することに努める.また,今年度もCovid-19の影響が懸念され,標本調査・野外調査ができなくなった場合,野外調査は高知県内に留め,手元にある標本を活用して分析を進める方向で検討している.
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19の感染状況悪化により,野外調査・標本調査・研究打ち合わせが困難となり,一部実施できなかったことが次年度使用額が生じた主な理由である.今年度もCovid-19の影響が続くと見込まれることから,この状況下での研究計画を修正し,採取済みの標本の分析に重点を置くことも考えている.そのため,次年度使用額は分析に関わる経費にあてることになる計画である.なお,感染状況が改善した場合には,旅費に使用する.
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