研究課題/領域番号 |
20K04155
|
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
藤崎 和弘 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (90435678)
|
研究分担者 |
飯尾 浩平 弘前大学, 医学研究科, 客員研究員 (70613488)
山下 典理男 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 研究員 (10734486)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 骨組織 / 力学試験 / 複合材料 / X線回折 / 石灰化 |
研究実績の概要 |
本研究では「生理学的作用によらない生体組織の石灰化」における力学特性改善を目指し、分担者らの有する医学・生理学的な知見と、微視構造観察・評価技術を導入することで、石灰化制御技術によるアパタイト―コラーゲンの強固な構造化条件を樹立する。また、組織間の「つながり」の強さを、組織内部のアパタイト結晶への荷重伝達特性によって評価する。 本期間においては、石灰化制御を施した骨試験片の微視構造解析のため、①骨脱灰試験片およびアパタイト形成試験片についてX線回折法による結晶構造評価、および、走査型電子顕微鏡による微視構造の高分解能観察と組成分析を行った。一連の実験を通じ、骨組織からアパタイトを除去する脱灰処理に関して、石灰化制御技術として提案している電圧印加処理によって組織が局所的に軟化すること、そして、局所軟化に伴って破壊強度が向上する結果が得られた。また、電圧印加による石灰化に関しては、形成したアパタイトが骨組織に似た結晶構造特性を有することを確認した。これらの結果は学会報告ならびに論文投稿を行っており、生成物の化学的な特性と本手法の実用性の観点で各分野の専門家から意見を求めているところである。 生体組織の異常石灰化形態の調査として、②血管組織の石灰化を試みた。チタン表面や骨表面と同様に、電圧印加により血管壁上にもアパタイトの形成が確認された。同様の現象が他の軟組織上にも形成する可能性があるため、研究分担者を通じて他部位の組織試料の収集を行った。 処理後の骨試験片の力学特性調査のため、③微小硬さ計測による構造特性評価を行った。骨試験片の脱灰部の硬さ測定を行うことで脱灰領域の軟化を確認した。本検証により、提案手法が局所的な脱灰に適していることを確認した。 以上、各種実験を通して得られた今期の成果は次年度の学会にて公表予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨試料に対する各種実験が進み、研究成果を国内外のオンライン開催の学会で報告した。論文投稿も進めており、次年度中の成果公開が見込まれている。また、骨以外の軟組織試料の入手も実現し、今後の展開が大きく期待できる。
|
今後の研究の推進方策 |
次期はこれまで得られた知見や基礎技術に基づいて、医療分野での応用展開に向けた課題調査や有効性の判断を行う。引き続き、実験にて得られた結果を国内外の学会にて発表し、関連研究者の意見を求めるとともに、成果を論文にまとめて公表していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初、成果報告のための国内外学会への参加や打ち合わせのための出張を予定していたが、延期やオンラインとなったことから必要経費に差異が生じた。次年度も国際学会の参加が難しい場合は国際誌への論文投稿などによる成果公表を目指す。また、実験などでの他機関への出張も難しい状況であったことから、対面での打ち合わせや、現地での共同実験は次年度に延期して実施することとした。
|