研究課題/領域番号 |
20K04156
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
鈴木 賢治 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (30154537)
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研究分担者 |
城 鮎美 (瀬ノ内鮎美) 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 放射光科学研究センター, 主任研究員 (60707446)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 二重露光法 / 高エネルギー放射光X線 / 応力測定 / オーステナイト系ステンレス鋼 / 溶接残留応力 |
研究実績の概要 |
粗大粒を持つ材料でかつX線透過方向に厚さを持つ材料のX線応力測定が困難であった。本課題では、その解決策として二重露光法を提案し、その実証から実用化への研究を実施している。また、そのためには高エネルギーX線用の2次元検出器の活用も重要であり、その技術と画像処理のソフトウェアなどの開発も行う。 2年目は、前年度の焼きばめリングの二重露光法の応力測定の成果を踏まえ、二重露光法による大型溶接材の残留応力測定を試みた。 まず、溶接部からの回折の特徴をなどの基本的な研究がないことから、白色X線による回折を単結晶、粗大粒および溶接部について検討した。その結果、溶接部の応力測定が困難である原因を明らかにした。単結晶は完全結晶であり、その回折は半径方向の広がり、円周方向の広がりがないので、放射状の線となる。半径方向の長さは、結晶の透過距離を表す。粗大粒の回折は、透過寸法が短く半径方向の短い斑点となり、方位が揃っていないために多数の斑点が現れる。これらに対して、溶接部の回折は、大きな寸法の結晶のために半径方向も長く、方位が揃っているが不完全なために円周方向にも大きく広がる。溶接部のは大きく広がった回折像がひずみ測定の誤差原因であることが明確となった。 JASRI共用ビームラインBL28B2の放射光実験では、回折斑点の広がりは波長と方位の広がりであり、それを2次元検出器で捉えられたが、溶接部のひずみの精度を得ることは困難であった。その解決のために、白色X線を単色X線に切り替え、波長分解能の精度を上げることでひずみ測定の可能性について研究を実施した。大型放射光施設SPring-8の量子科学技術研究開発機構のBL14B1ビームラインを利用して、溶接部の残留応力を測定した所ところ、二重露光法で残留応力分布測定ができた。最も測定困難と言われている溶接部の残留応力が二重露光法で測定ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2年度について、以下の3点について実際に研究を実施した。 1. 高エネルギー2次元検出器(CdTeピクセル検出器)のエネルギー閾値分解能の改善を試みたが、ひずみ測定の精度まで向上できなかった。その対策として、モノクロメーターによる単色X線を利用することでひずみ測定の精度が得られることができた。 2. 溶接部からの回折の特徴を明らかにすることで、溶接部からのX線応力測定の対策ができるようになった。 3. 以上のことから実際に、放射光単色X線を利用して二重露光法を試みた結果、溶接部からの残留応力測定が可能であることが確認 以上の実施と成果が得られたことは、最も測定困難と言われている溶接部の残留応力測定が可能となり、画期的な結果と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
3年目は最終年度であり、これまでの成果を集大成として、オーステナイト系ステンレス鋼の小口径突合せ溶接配管溶接配管の残留応力マップ作成に挑戦する予定である。オーステナイト系ステンレス鋼突合せ溶接配管は、これまで残留応力を実測されたことがなく、大口径溶接配管の残留応力の結果を無次元化して強度評価に利用されている。本成果で測定されたならば、原子力発電設備をはじめ、多くのプラントの強度評価に役立つものと思われる。 高エネルギー放射光単色X線による二重露光法では平面応力の評価しかできない欠点があるので、それを相補的に補うために、溶接配管の3次元応力測定を中性子を用いて実施する。研究炉の核分裂中性子を利用して、ひずみスキャニング法で非破壊のマクロの残留応力測定を得て、微小領域の溶接残留応力を放射光で測定して配管の溶接底部の応力マップを作成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年12月に開催予定の国際会議ICRS-11 (フランス・ナンシー)がCOVID-19により2022年3月27-30日に延期となったため,年度にまたがる出張となった.年度末に予算が残額となっている.
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備考 |
CdTeピクセル検出器を利用した画像処理、残留応力測定に関するソフトウェア(マクロ、プログラム、マニュアル)などが公開されている。
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