火力発電プラントボイラ給水・補給水には、有機アミン類水処理薬剤を採用する傾向が見られている。しかし、これらのアミンはボイラ設備材料の腐食挙動に与える影響が不明である。さらに、これらのアミンは熱分解により有機酸の蟻酸や酢酸などを生成するため、生成した有機酸が不純物としてプラント水・蒸気系の材料腐食の一要因になることも懸念されている。本研究では、火力発電プラントボイラ設備材料を用い、各種の有機アミンで調製した模擬ボイラ水および、有機アミンの生成物として有機酸(蟻酸や酢酸)および塩化物イオンなどの不純物を添加した模擬ボイラ水における各種腐食試験および形成皮膜分析などを行い、各種有機アミン類水処理薬剤がボイラ設備材料の腐食挙動に与える影響を調査した。 令和2年度および令和3年度では、ボイラ鋼管材料のSTBA12とSTBA24低合金鋼およびそれらの溶接部材について各種腐食試験および形成皮膜の分析試験を実施した。また、試験には比較材として低圧蒸気タービン材料の9CrMoV鋼と13Cr鋼も使用した。研究成果の一部として、塩化物イオン含有ボイラ水中におけるSTBA24低合金鋼およびその溶接部材の腐食挙動に対するギ酸の影響に関する論文を国際学術誌に発表した。さらに、塩化物イオン含有ボイラ水中における上記各種供試材の腐食挙動に対する有機アミンおよび有機酸の影響に関する研究成果を学会に発表した。 令和4年度では、ボイラ設備用低合金鋼および比較として低圧蒸気タービン材料の腐食挙動に及ぼす有機アミンおよび有機酸の影響を引き続いて調査した。研究成果を国内学会に発表し、また論文として国際学術誌に発表した。
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