本研究は,母材ゴムの架橋密度の観点から中間層の形成に及ぼす影響を明らかにするとともに架橋密度が及ぼす力学的特性への影響を明らかにすることを目的 としている.シリコーンゴムの主剤と硬化剤の配合重量比を変え,異なる架橋密度の母材ゴムに平均粒径300 nmのナノ粒子を充填したナノ複合材料および平均粒径1.6 μmのマイクロ粒子を充填したマイクロ複合材料を作製した.架橋密度とともに粒子の体積充填率を変えた複合材料を作製し,それぞれの試験片について粘弾性試験,引張試験および破壊試験を行った. 粒子表面に生成される中間層の影響を明らかにするために,中間層が形成されるマイクルサイズのシリカ粒子を異なる充填率と作製した複合材料についても試験を実施した.引張試験について,粒子充填率を変えて作製したナノおよびマイクロ複合材料について引き続き実施し,母材ゴムの架橋密度,充填粒子の粒径・体積充填率ごとに応力-ひずみ線図を取得した.材料の剛性および強度として弾性係数,破断ひずみを作用して結果を整理した.材料の靭性を評価するために破壊試験として両縁き裂を有する試験片の引張試験を実施した.線形破壊力学が適用できることを確認し,破壊靭性として臨界応力拡大係数を採用して結果を整理した. ナノ粒子表面に形成される中間層厚さは主に粒子充填率に依存することを見出した.ゴム複合材料の剛性,強度および靭性について,ナノ粒子充填により粒子表面に形成される中間層により見かけ上,粒子充填率が増加することにあることを明らかにした.ただし母材架橋密度によってはマイクロ粒子充填の場合よりもさらに破壊靭性が増加することがわかった.したがって,充填粒子の粒径および母材架橋密度によりゴム複合材料の剛性,強度および靭性を制御することが可能であることを明らかにした
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