水素ガス環境における疲労き裂進展加速モデルを転位による水素の補足(トラップ)挙動に基づいて確立するために,2021年度では理論構築を行い,かつ2020年度に引き続き一定力学条件下にて負荷周波数と環境温度を変化させた実験を実施した。2020年度では低圧水素ガス(圧力0.7MPa)環境にて行ったが2021年度では10MPaの高圧水素ガス環境で室温ならびに150oCと温度を変化させつつ,負荷周波数を1から0.01Hzまで変化させた。 単一パラメータθxtを用いて転位-水素トラップ挙動を時間の関数として定義し,負荷周波数と温度に関連付けて各実験条件におけるき裂進展加速率を表現できるようにした。例えば,水素ガス圧力0.7MPa,温度90oCと10MPa,150oCでは環境が異なる一方でパラメータθxtはほぼ同程度であり,その結果き裂進展加速率も同程度であった。すなわち,これにより,異なる圧力,温度でのき裂進展加速率を定量的に求めることができる。
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