研究課題/領域番号 |
20K04163
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
古川 大介 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (80774760)
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研究分担者 |
佐伯 壮一 名城大学, 理工学部, 教授 (50335767)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 皮膚粘弾性 / バイオメカニクス / マイクロ断層検出 / 光干渉断層画像法 / ひずみ速度分布 |
研究実績の概要 |
本研究は,ドップラーOCT(Optical Coherence Tomography: 光干渉断層画像法)を利用し,皮膚の形態分布,皮膚代謝機能(毛細血管血流速)および皮膚力学特性(粘弾性)との関連について,評価することを目的としている.主に当該年度では,皮膚吸引試験器の構築および皮膚吸引プローブの改良を行い,さらに前年度ステップ状の吸引波形による静的吸引試験を実施した.静的引張り試験では,吸引負荷から除荷する際,変位が検出限界より大きく,検出が困難であった.このため,周期吸引へと吸引方法を変更し,皮膚内部の応答変形をドップラー変位速度とOptical Coherence Straingraphy : OCSAを用いたひずみ速度解析を実施した.毛細血管(組織形態)構造と変形応答をマイクロ断層可視化した結果,周期吸引に対し,表皮および皮膚真皮の大域的な空間応答をみると,真皮上層は表皮の変形応答に対し位相が遅れることが分かった.このことから,表皮層は真皮層状に対し,弾性的な挙動であることが分かった.また,真皮上層の毛細血管付近のひずみ速度を確認すると,周辺組織よりもひずみ速度が高く,毛細血管が周辺組織より弾性的であると考えられた.この結果は,ドップラーOCTによる変位速度およびOCSAによるひずみ速度分布解析ともに同様の結果であった.これより,皮膚粘弾性をマイクロ断層検出できたといえる.今後の展開とし,研究目的にあるように皮膚吸引応答から得られる皮膚粘弾性分布(変位またはひずみ速度)の情報を取り入れ,材料パラメータ(弾性および粘性)の断層分布推定を実施する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,皮膚吸引時における皮膚変形をドップラーOCTより断層画像として取得し,皮膚代謝(毛細血管配向・血流速)および変形ひずみ量から皮膚粘弾性をマイクロ領域で推定することを目的としている.これにより,代謝機能と皮膚粘弾性からシワやたるみの発生要因となるコラーゲン線維の配向特性,エラスチン繊維との関連性について議論が可能になると考える.計画2年目(R3)では,吸引装置の構築およびプローブ改良,粘弾性特性(変位速度,ひずみ速度)との断層検出とともに,材料(粘弾性)パラメータの推定法を検討する必要があった.推定法の検討には,皮膚変形の構造解析(順解析)を行い,逆解析法を検討する必要があるが,R3年度では解析法の構築が遅れている.さらに,吸引プローブの改良およびOCT計測装置の一部装置改良が残されている.
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今後の研究の推進方策 |
研究推進方策として,次の課題解決に取り組む. (1)実験装置の改良 (2)粘弾性推定アルゴリズムの開発 課題(1)では,吸引波形を周期吸引としたことにより,検出速度の向上が必要となる.このため,検出速度の高速化によるアナログ周波数フィルタを検討する.課題(2)では,皮膚変形に対す構造解析が必要である.このため,順解析を早急に実施することを課題とし,現状では,毛細血管が比較的弾性的である知見を基に順解析上にて実験との整合性を測る.また,問題の簡素化として,弾性係数のみを未知として,x-z の2次元空間にて実施する.先行研究(Optical Coherence Thermography:OCTH)にて剛性(K)マトリクスを推定した経緯があり,先行研究を利用して推定を実施する.この手法は,ムーアペンローズの逆行列(MP)を利用するが,本手法にて逆解析が困難な場合,機械学習・デープランニングを利用し,マトリクスの推定を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
吸引用OCT装置の構築に関連し,吸引装置箇所の改良の遅れがあり,これに連動し検出装置の改良が遅れたことが理由である.OCT装置の検出器側では,高速化とともにアナログフィルタの購入を検討しているが,デモ機などの遅れから,購入を検討することに遅れが生じた.また,共同研究先での実験実施が延期などにより,遅れたことも理由である.
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