研究課題/領域番号 |
20K04165
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
志澤 一之 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (80211952)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | LPSO型Mg二相合金 / 有限変形理論 / 結晶塑性Cosseratモデル / キンク帯 / 回位密度 / 転位密度 / 強度発現機構 / 寸法効果 |
研究実績の概要 |
長周期積層構造(LPSO)を強化相とするMg合金は,キンク帯形成を主因とする材料強化によって飛躍的に力学特性が向上することが知られている.しかしながら,キンク帯の形成機構は十分に解明されておらず,従来のせん断モード(転位の移動と蓄積)に加えて回転モード(回位の形成)を考慮した材料モデルの構築に期待が寄せられている.本研究では,転位のみならず回転性の結晶欠陥である回位を考慮した大変形結晶塑性モデルを構築し,高次ひずみこう配の解析に適するメッシュフリー法を用いてMg基LPSO二相合金におけるキンク強化の再現を可能とする数値解析手法を確立することを目的としている.令和2年度では,微視回転自由度を有するCosseratモデルを有限変形理論の体系で結晶塑性論的に構築し,得られたモデルに基づいてメッシュフリー解析およびC0級要素でのFEM解析を実施することで,短冊形LPSO単結晶におけるキンク帯形成を確認した. 続いて令和3年度では,材料の特性長がいかなる寸法効果を発現するかを調査し,形成されるキンク帯の幅にメッシュ依存性がないことを確認した.また,回位由来の転位密度を考慮する方が,材料強度が高く予想されることを指摘した.加えて,α-Mg相とLPSO相からなる短冊形三結晶に圧縮負荷を与えた場合,底面系だけのすべりを考慮するとOrtho形キンクが,一方,柱面系および二次錐面系も考慮するとRidge形キンクが発生することを見出した.さらに,キンク帯形成後に逆負荷を作用させると,前者では結晶方位と転位が回復し,引張りのみの時に対して加工硬化が増大しないが,後者では方位,転位ともに残存するため,引張りのみの時よりも加工硬化が増大することを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画どおり,令和3年度には結晶塑性Cosseratモデルの有する寸法効果および回位依存の転位密度の効果を調査するとともに,短冊形三結晶を用いてOrtho形キンクおよびRidge形キンクの発生傾向,ならびに各々の有する加工硬化特定を明らかにできたため.ただし,C0級要素とペナルティ法を組み合わせたFEM解析の方が,メッシュフリー解析より計算コストが低減されることが判明したため,令和3年度からは主力をFEM解析に移行しつつある.
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度では,令和3年度に対象としたα-Mg相とLPSO相の短冊形三結晶をさらに拡張して短冊形九結晶のミルフィーユ構造を作製し,より現実のMg二相合金に近い状態での回位-結晶塑性解析を実施することを計画している.その際,LPSO相の結晶方位や転位密度の初期不均一性を様々に組み合わせて圧縮負荷解析を実施し,どのようなキンク帯が発現するかを確かめる.また,圧縮後に逆負荷を加えた場合の強度上昇を再現し,いかなる不均一性が加工硬化に有効に寄与するかを明らかにする.さらに,α-Mg相の動的再結晶による結晶粒微細化を模擬し,α-Mg相の短冊内を多数の微細粒に分割した場合の圧縮および逆負荷解析を実施する.それが完成した後に,これまで構築したLPSO型Mg二相合金のミルフィーユ構造をユニットセルとし,周期境界条件の下,均質化法によってLPSO相のキンク形成とα-Mg相の結晶粒微細化がマクロ強度の向上に及ぼす影響について調査する.加えて,令和4年度が本研究課題の最終年度に当たるため,これまで得られた成果をまとめて原著論文として発信する予定である.
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