研究課題/領域番号 |
20K04176
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
吉川 高正 三重大学, 工学研究科, 准教授 (10505902)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | バルク金属ガラス / 降伏関数 / 温度依存性 / ひずみ速度依存性 / ガラス転移温度 |
研究実績の概要 |
ジルコニウム系バルク金属ガラスの降伏や破壊に対して,環境温度,変形速度(ひずみ速度)条件を含む関数の構築を目指し,各種実験を実施してきた. 常温近傍のバルク金属ガラスに対して従来から提唱されてきたMohr-Coulombの降伏関数をもとにした温度依存型の関数を実験結果に基づいて検証してきた結果,①ガラス転移温度近傍から高温で,実験結果との乖離が存在することから基礎となる降伏関数を変更する必要性が示唆され始めた.一方,②熱エネルギーとともに力学的エネルギーが作用している状況では,ガラス転移温度が変化している可能性が現れた.このことは,負荷条件によってMohr-Coulombの降伏関数から塑性流動状態に遷移する降伏関数への切り替わりの温度域が変化することを示唆しており,バルク金属ガラスの機械構造物としての使用や塑性加工条件に大きな影響をもたらす可能性がある.②の結果と予測に基づき,あらかじめ特定の負荷を与えたバルク金属ガラスを加熱していくことで,ガラス転移を生じる温度の変化を実験し始めた. 降伏関数の変化については,変形速度の影響を調査する条件を検証しながら,高温下での関数を検証していく予定である.一方,この研究を通じてあらわれた熱・力学的エネルギーの複合的作用下における挙動については,前者の降伏関数の構築において必要となるパラメータにもかかわり,今後の研究の方向性にも強く関与すると予測されるため,同時進行で注意深く調査していく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当研究課題の開始までに実施してきた実験結果によってもともとの予定に対しては大幅な遅れはないが,2点の理由で進行に若干の遅滞があるものと考えている.第1に,実績に記載した熱・力学エネルギーの複合作用下における温度依存性の変化の可能性が実験的に示唆されたため,同時進行でこの新しい挙動を調査し始めたためである.第2は課題とはかかわりないが,感染症の対策によって担当者の時間的・労務的負担の増加が発生したことである.結論として現状若干の遅れがあると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
若干の進捗の遅れが認められるが,当初予定通り,高温下におけるひずみ速度効果を実験的に検証していく.特に変形メカニズムの遷移が予測されるガラス転移温度近傍から高温での関数系を詳細に調査していく.2020年度樹脂に対する実験の中で,垂直応力とせん断応力を複合的に付与する場合,それぞれのひずみ速度をもとに一意的な条件を制御することが非常にむつかしいことがわかるとともに,実験的に得られる降伏曲面に分布した厚みを持ちうるものと予測できた.この考え方に従って,複数のひずみ速度条件においての複合負荷での降伏曲面分布を検証していく.それとともに,関数としての表現方法を検討していく. 一方で,変形メカニズムの遷移する温度域自体を変化させうる力学的エネルギーの効果について調査を続けたいと希望する.すなわち,本課題の目的である降伏関数がMohr-Coulombから変化していく条件を検証することが必要であると判断し始めている.これによって,新しい研究課題の提案を見据えながら,本研究課題における目標を達成していく.
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