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2021 年度 実施状況報告書

遷移金属窒化物の相境界に基づく耐摩耗膜の創製および多層構造への展開

研究課題

研究課題/領域番号 20K04180
研究機関佐賀大学

研究代表者

長谷川 裕之  佐賀大学, 理工学部, 准教授 (60403482)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード弾性仕事 / 塑性仕事 / 硬度 / 弾性率 / 摩耗挙動 / 切削抵抗
研究実績の概要

本研究では,切削工具に応用される耐摩耗膜の開発とともに耐摩耗膜の機能性を決定づける微細構造・機械的性質・熱的性質の解明を目的とする.2021年度では,昨年度に得られた遷移金属窒化物膜の硬度値・摺動特性・耐酸化性の結果の要因を検証した.
遷移金属窒化物に第3金属元素添加することにより,固溶強化・分散強化を代表とする材料強化機構が作用し,硬度の上昇が導かれると考え,硬度試験時の負荷荷重と圧子の押込み深さからなる荷重変位曲線を用いて検証を進めた.具体的には,硬度試験時に与えた機械仕事が,薄膜の弾性変形と塑性変形に費やされる仕事であると仮定し,それぞれの変形仕事を求めたところ,第3金属元素の含有量に依存して塑性仕事が変化し,硬度値との相関がみられた.摺動特性の検証では,摩耗挙動の影響因子として薄膜の硬度値および弾性率に着目した.硬度値と弾性率の比は,弾性ひずみの蓄積およびクラックの進展と相関があり,摺動試験後の摩耗深さに影響を与えることを示した.耐酸化性の検証では,酸化の時間依存性を検証するため,等温保持下での酸化試験を実施した.等温酸化による熱重量の時間変化の測定とともに,酸化速度定数ならびに活性化エネルギーを算出し,第3金属元素は遷移金属窒化物の酸化進行の遅延に寄与することを示した.
本研究課題では,開発した遷移金属窒化物膜を切削工具に被覆し切削性能を検証する.切削時には,切削抵抗と呼ばれる力が作用し,工具摩耗ならび工具寿命に影響を与える.2021年度において,インプロセスで切削抵抗を測定する手法を構築し,切削抵抗の構成成分である主分力・背分力の測定に成功した.そして,切削後の工具摩耗の評価から,切削抵抗の増大とともに工具の逃げ面摩耗が進行していることを確認した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2021年度では,昨年度の研究成果を活用し,詳細な機械的分析ならびに熱的分析を進めるとともに,応用試験である切削試験を試行し,研究計画を遂行した.以上より,おおむね順調に研究計画を推進していると考えている.

今後の研究の推進方策

最終年度では,基板と薄膜の密着性をスクラッチ試験により評価し,現在までに得られた遷移金属窒化物の微細構造・機械的性質・熱的性質の結果を総括する.それぞれの窒化物膜の機能性を考慮し,多層膜の合成を試み,多層化が耐摩耗機能に与える効果を解明する.さらに,切削抵抗の測定手法の改良を進めるとともに,これまでに開発した耐摩耗膜を被覆した工具を用いて切削試験を実施し,応用面での検証を進める.

次年度使用額が生じた理由

物品費を執行し,機器ならびに消耗品の購入を進めたが,最終的に千円未満の残高が生じた.次年度に適切に執行する.

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] 刃先表面コーティング耐摩耗膜の切削工具への応用と刃先摩耗機構2022

    • 著者名/発表者名
      長谷川裕之
    • 雑誌名

      表面技術

      巻: 73 ページ: 86-91

  • [学会発表] 多元系窒化クロム耐摩耗膜の開発および切削工具への応用2021

    • 著者名/発表者名
      堤 祐太郎, 佐々木 勝麻, 長谷川 裕之
    • 学会等名
      精密工学会 九州支部 第22回学生研究発表会
  • [学会発表] 相境界に基づく窒化クロムアルミ系耐摩耗膜の創製2021

    • 著者名/発表者名
      森 啓矩,宗 智里, 長谷川 裕之
    • 学会等名
      精密工学会 九州支部 第22回学生研究発表会

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公開日: 2022-12-28  

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