研究課題/領域番号 |
20K04181
|
研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
真田 和昭 富山県立大学, 工学部, 教授 (20363872)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 熱伝導率測定 / 有限要素解析 / サーモグラフィー / ポリマー系複合材料 / 熱伝導性フィラー / 熱伝導率 |
研究実績の概要 |
本研究は、ポリマー系複合材料を対象に、サーモグラフィー顕微鏡による温度場計測、定常法とレーザーフラッシュ法を用いた熱伝導率測定、メゾ構造を詳細に考慮した解析モデルによる熱伝導率測定に関する有限要素解析を行い、熱の流れとメゾ構造の関連性を明らかにして、熱伝導メカニズムを解明するもので、高熱伝導化に最適なメゾ構造を見出すとともに、不均質性を考慮した新規熱伝導率測定方法の提案を目指すことを目的とする。本年度に得られた結果を要約すると以下の通りである。 (1)表面層と熱伝導層からなる2層モデルの熱伝導率測定に関する有限要素解析を行い、2層モデルの熱伝導率に及ぼす表面層の厚さ、熱伝導率の影響について検討した。その結果、レーザーフラッシュ法で得られた熱伝導率は、定常法で得られた熱伝導率と比べて増大し、表面層の影響を強く受けた。 (2)中空アルミナ/エポキシ樹脂複合材料の熱伝導率測定に関する有限要素解析を行い、複合材料の熱伝導率に及ぼす中空アルミナの空洞率の影響を検討した。中空アルミナの接触を考慮していない場合、複合材料の熱伝導率は、空洞率10vol%まで、空洞のないアルミナを用いた結果と同等の値を示した。しかし、中空アルミナの接触を考慮した場合、複合材料の熱伝導率は、空洞率10vol%まで、空洞のないアルミナを用いた結果よりも高い値を示した。 (3)アルミナおよび窒化ホウ素(BN)を用いたエポキシ樹脂複合材料の熱伝導率測定と熱伝導率測定に関する有限要素解析を行い、複合材料の熱伝導率に及ぼすフィラー形状の影響を検討した。アルミナ/エポキシ樹脂複合材料の場合、定常法で得られた解析結果は、実験結果と良く一致したが、レーザーフラッシュ法で得られた解析結果は、実験結果よりも低い値となった。BN/エポキシ樹脂複合材料の場合、定常法とレーザーフラッシュ法で得られた解析結果は、実験結果よりも低い値となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、2層モデルおよび中空アルミナ/エポキシ樹脂複合材料を対象とした熱伝導率測定に関する有限要素解析を実施し、異なる熱伝導率測定方法で得られる複合材料の熱伝導率とメゾ構造の関連性を理論的に明らかにした。また、アルミナ/エポキシ樹脂複合材料および窒化ホウ素/エポキシ樹脂複合材料を作製し、熱伝導率測定と熱伝導率測定に関する有限要素解析を行い、複合材料の熱伝導率に及ぼすフィラー形状の影響を検討するとともに、実験結果と解析結果を比較して、熱伝導メカニズムの解明を試みた。これらの検討は、ほぼ計画通りに進捗した。しかし、サーモグラフィー顕微鏡による複合材料内部の温度場計測は、名古屋市工業研究所所有の高精度な装置を用いる必要があるが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で実施することができなかった。従って、今年度の進捗は「やや遅れている」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、これまでに得られた結果と明確になった課題を鑑み、以下の方策で推進する。 (1)ポリマー系複合材料を作製し、サーモグラフィー顕微鏡による材料内部の温度場計測を行う。まず、大きさ・形状の異なる熱伝導性フィラーを組み合わせてメゾ構造を変化させ、熱の流れとメゾ構造の関連性を明らかにする。次に、熱の流れが定常または過渡状態になるように、パルス電源を用いてフィルムヒーターの発熱を制御させ、メゾ構造を変化させた場合の定常・過渡の熱の流れの相違点を明らかにする。 (2)実験に対応したメゾ構造を有するポリマー系複合材料の解析モデルを用いて熱の流れに関する有限要素解析を行い、熱の流れとメゾ構造の関連性を体系的に整理して、熱伝導メカニズム解明を試みる。また、既存の熱伝導率測定方法の測定原理における問題点を抽出し、ポリマー系複合材料を対象とした新規熱伝導率測定方法を提案する。 (3)シラン系カップリング剤等を用いて熱伝導性フィラーの表面改質を行い、マトリックスとの接着性を変化させたポリマー系複合材料を作製して、サーモグラフィー顕微鏡による複合材料内部の温度場計測を行い、熱伝導性フィラーとマトリックス間の界面近傍の温度差等に注目して、表面改質有無の違いによる温度分布の変化を検討する。また、熱伝導率測定装置で計測したポリマー系複合材料の熱伝導率との関連性についても考察を加える。
|