本研究は、ポリマー系複合材料を対象に、サーモグラフィー顕微鏡による温度場計測、定常法を用いた熱伝導率測定、メゾ構造を詳細に考慮した代表体積要素(RVE)モデルによる熱伝導率に関する有限要素解析を行い、熱の流れとメゾ構造の関連性を明らかにして、熱伝導メカニズムの解明を目的とした。最終年度に得られた結果を要約すると以下の通りである。(1)アルミナ、窒化ホウ素を用いた複合材料の温度場計測を行なった。複合材料中のフィラーの存在状況、種類、体積分率の違いで温度場が変化し、局所的な熱伝導率分布と関連性を示した。(2)窒化ホウ素、多層カーボンナノチューブ(MWNT)を用いた複合材料の熱伝導率を測定した。窒化ホウ素を用いた複合材料の熱伝導率は、アルミナを用いた複合材料の場合に比べて、高くなった。また、MWNTを用いた複合材料の熱伝導率は、MWNT体積分率の増大に伴い直線的に増大した。(3)アルミナ、窒化ホウ素を用いた複合材料の境界条件の異なるRVEモデルを用いて熱伝導率に関する有限要素解析を行った。定常法を考慮した場合、表面に樹脂層があるRVEモデルで得られた熱伝導率は表面に樹脂層のない場合に比べて低下したが、レーザーフラッシュ法を考慮した場合、熱伝導率はほとんど変化しなかった。 また研究期間全体で得られた主な結果を要約すると以下の通りである。 (1)温度場計測の結果、フィラーの存在状態、種類、体積分率の違いで温度場が変化し、局所的な熱伝導率分布と関連性を示した。(2)空洞を有するフィラーを用いた複合材料の熱伝導率は、フィラー同士の接触を考慮した場合、空洞率10vol%まで、空洞のないフィラーを用いた複合材料の結果よりも高くなった。(3)熱伝導率に関する有限要素解析の結果、解析結果は実験結果と同様な傾向を示し、フィラー同士の接触の影響を考慮すると、解析結果と実験結果の差異が小さくなった。
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