研究課題/領域番号 |
20K04182
|
研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
高坂 達郎 高知工科大学, システム工学群, 准教授 (80315978)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 成形モニタリング / 損傷モニタリング / 複合材料 / FRP / 光ファイバセンサ / レイリー散乱 / 層間剥離 / 樹脂流動 |
研究実績の概要 |
CFRP構造は比強度,比剛性に優れるが,高いコストがネックとなっている.製造時から運用までCFRP構造の欠陥や損傷状態を把握することが出来れば,製造・運用コストが削減と信頼性の向上が見込める.長い測定長,高い空間およびひずみ分解能を有するレイリー散乱型光ファイバ分布センサは,このような用途に最適であると考えられるが,それを適用した研究は非常に少ない.そこで,本研究では,レイリー散乱型分布センサを用いて,1つのセンサでCFRP構造の製造から廃棄までを監視する生涯監視技術を構築することを最終目標として,樹脂流動と成形ひずみの監視,および運用時の層間剥離損傷同定手法の開発を行う. 2020年度では,(1) 2次元樹脂流動時のフローフロント位置の検出手法を確立すること,(2)剥離形態と測定されたひずみの乱れ場を理論解析によって結びつけることを目的として研究を行った.その結果,(1)については,ガラスプリフォームに埋め込んだ分布センサによって樹脂流動に伴うひずみ変動を取得し,フレーム間差分法を用いることにより樹脂のフローフロント位置の変化によるひずみの乱れを検出し,高い精度でフローフロント位置検出が可能であることを示した.さらに格子状に配置した1本のセンサによって,二次元流動のモニタリングが可能であることを,光ファイバセンサおよび目視による測定結果から明らかにした.(2)については,CFRP積層板を製作し,DCB(double cantilever beam)試験,ENF(end-notch fracture)試験そしてSLJ(single-lap joint)試験片を用いて層間はく離によるひずみ分布の変動の測定を行い,また有限要素解析結果と比較して,光ファイバセンサにより層間はく離端の位置検出が可能であることを明らかにした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度では,(1) 2次元樹脂流動時のフローフロント位置の検出手法を確立すること,(2)はく離形態と測定されたひずみの乱れ場を理論解析によって結びつけることを目的とした. (1)については,まず1次元流動のフローフロント位置の検出の可能性を明らかにするために,ガラスプリフォームに埋め込んだ分布センサによって樹脂流動時のひずみ分布測定を行い,フローフロント位置との関係を調べた.その結果,フローフロント位置でひずみが圧縮からゼロに大きく変化することが分かった.しかし流動中に全体のひずみもある程度変化することが分かったため,フローフロント位置のみを検出するためにフレーム間差分法を採用した.また,ファイバ長さ方向と角度を持った流れについても測定を行い,45°までの斜め流れならば検出が可能であることを示した.それらの結果より,1本のファイバを格子状に配置して2次元流動におけるフローフロント位置の検出を試み,それが可能であることを示し,目標をクリアすることが出来た. (2)については,CFRP積層板を製作し, DCB試験片,ENF試験片そしてSLJ試験片の表面にレイリー散乱型分布センサを張り付けて,層間はく離進展によるひずみ分布測定を行った.その結果,はく離先端で大きなひずみ場の乱れが生じることが明らかになった.また,各試験片について有限要素解析を行い,測定された分布と解析結果が非常に良い一致を示すことが分かった.これにより,光ファイバセンサにより層間はく離端の位置検出が可能であることを明らかにし,またはく離とひずみ分布の予測データがあれば,損傷モードの同定も可能となる見通しが立てられた.以上から,この目標についてもクリアできたと考えている
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度までの進捗状況は順調であり,その結果を論文にまとめつつ,最初の予定通りに今後も進めていく予定である.2021年度からは(3)解析データベースよりひずみの乱れ場からはく離形態を同定する手法を確立すること,(4)多重剥離損傷のモニタリングに本手法が適用可能であることを実証すること,が目標として追加される. 2021年度では,(1)について,成形誘起ひずみ分布測定を行い,これまでの研究で行ってきた成形シミュレーション結果と比較・議論していく.(2)について,2次元形状の剥離損傷について乱れ場を解析および3点曲げ試験によって求め,互いの結果を比較することで分布測定の精度を検証する.また,(3)についてはまずは乱れ場のエネルギー分布と空間周波数を用いた1次元剥離進展の同定手法を構築し,実際に実験に用いてその有効性を明らかにする. 2022年度では,(1)について,初期欠陥を導入した場合の成形誘起ひずみ分布測定を行い,前年の(2)の結果を応用して初期欠陥同定を行う手法を開発する. (3) について,乱れ場の形から,パターンマッチングによって損傷形態を同定する手法を構築する.一部に未貫通予き裂を入れた試験片の3点曲げ試験による疲労剥離進展試験で検証を行う.さらに (4)について,複数の小さい損傷からの多重剥離損傷進展のモニタリングを行って,本手法の実用性を実証する.
|