CFRP構造は比強度,比剛性に優れるが,高いコストがネックとなっている.製造時から運用までCFRP構造の欠陥や損傷状態を把握することが出来れば,製造・運用コストが削減と信頼性の向上が見込める.レイリー散乱型光ファイバ分布センサは長い測定長と高い空間分解能を有するが,それを剥離検出に適用した研究は非常に少ない.そこで,本研究では,レイリー散乱型分布センサを用いて,1つのセンサでCFRP構造の製造から廃棄までを監視する生涯監視技術を構築することを最終目標として,樹脂流動と成形ひずみの監視,および運用時の層間剥離損傷同定手法の開発を行った. 2023年度では,レイリー散乱型分布センサを用いて,(1)剥離の深さ方向位置がひずみ検出に与える影響を明らかにすることおよび(2)温度測定による剥離検知の可能性を明らかにすることを目的として,実験および解析を行った.実験では複数の深さに疑似剥離を導入したCFRP積層板を用意し,3点曲げ試験を行った.その結果,深さがひずみ分布に与える影響が明らかになり,分布センサを用いて両面のひずみ分布を同時に測定することで,剥離先端位置と深さ位置を検出できることが分かった.また表面に温度を加えて裏面の温度伝達の遅れ分布を分布センサにより測定することで,ひずみが加わらない場合でも剥離検出が可能であることが分かった. 本研究では全体を通じて,1つのレイリー散乱型光ファイバ分布センサにより,樹脂含浸工程の樹脂流動,曲げにおけるモードI剥離検出とモードII剥離検出,剥離深さの検出が可能であることを示すことが出来た.そして無負荷時であっても,温度を加えることによって剥離検出が可能であることを示すことが出来た.今後は疑似等方性板やスキン―ストリンガ構造などの実用的なFRP構造への応用を目指していきたい.
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