研究課題
結晶質構造材料の応力状態を中性子回折によって測定する場合,無応力状態における結晶格子ひずみの基準値d0(通称ディーゼロ:基準格子定数)が必要である.しかし,種々の元素を含む工業用構造材料のd0を理論的に決定することは困難であり,実測することが望ましい.d0測定の際,,d0測定用試料に応力除去焼きなましを施し,残留応力を開放することで無応力状態とし,d0測定を行うことがある.しかし,応力測定ニーズが特に高い溶接部では,原子拡散のために基準格子定数が分布を有していることなどが原因で,応力除去焼きなましによっても無応力状態が得られないという問題がある.この対策のひとつとして試料に細かい切り込みを導入することで応力を解放させたいわゆる櫛状試験片が用いられているが,現状では,この試験片の適切な準備方法(形状寸法及び加工方法)が確立されていない.その結果,正確なd0が得られず,残留応力が試料内でつり合い状態にないなど,明らかに不正確な応力値となっているケースが多々見受けられる.そのため,特に産業界からのd0試験片の標準化に対する要求は高い.本研究では,d0測定における種々の影響因子を検討し,d0測定用の試験片準備方法を確立することを目的としている.この4年間の実験及び数値解析的検討により,櫛状のd0試験片の切出し加工法としてワイヤ放電加工が適切であること,また,応力解放させる方向の切り込み幅(櫛の歯の幅)は3㎜以下が適切であることを明らかにし,d0測定用試料の標準化に向けた重要な知見を得た.
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Metal Finishing News
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