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2022 年度 実施状況報告書

Nanoconfinement効果を応用した水素貯蔵材料の開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K04186
研究機関明治大学

研究代表者

納冨 充雄  明治大学, 理工学部, 専任教授 (70218288)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード水素貯蔵材料 / Mg-Fe / Graphite / Grahene
研究実績の概要

平成4年度は,昨年度のメカニカルアロイング(MA)によって製造されたMg-Fe系を発展させて,Mg-Feにグラフェン系炭素材料を化合することを検討した.Zhangらは,MgH2に5 wt.%のグラフェン(Gr)を添加することで,水素放出温度を383.9 ℃まで低減すると報告している.このGrと類似の分子構造を有する材料として,Grの単層あるいは数層に相当するグラフェン(GN)がある.Zhangらの別の研究では,MgH2に対して10 wt.%のGNを添加することで,単体でミリングされたMgH2と比較して,水素放出温度が100 ℃低減すると報告している.また,ShriniwasanらはGNによる水素放出温度の低減効果はC原子とMg原子との間における電子移動によるものであると報告している.しかし,GNの機械的及び電気的特性はその結晶性に大きく依存する一方で,GNは作製時に官能基やその他構造欠陥が導入されやすい.また,GNと比較して空乏欠陥や酸素含有官能基が多く存在する還元型酸化グラフェン(rGO)は,作製方法が単純かつ大量生産が可能であることから,近年rGOを添加した水素貯蔵材料の研究が報告されている.そこで,Gr,GN,rGOをMg-FeにMAすることにした.まず,構造欠陥のないGNを作製し,その後,Mg,Fe,グラフェン系炭素材料をボールミルで混合した水素貯蔵材料を作製し,グラフェン系炭素材料がMg-Feの水素貯蔵特性に及ぼす影響を評価する.
これまでBottom-up的アプローチとしてMg薄膜を作製してきたが,その基板にはすべてポリイミド樹脂を使用してきた.ポリイミド樹脂は高分子材用の中では耐熱性が高く,水素透過係数も高いため最適な基板であったが,積層膜の性能向上のためには再検討が必要と考えた.そこで,各種高分子材料の水素透過係数を測定し比較した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の供試材であるGr,GN,rGOの中でGNは欠陥の少ない構造を有する必要があるため独自に作製した.Gr粉末,炭酸カリウム粉末,2-プロパノール(IPA)を用いて,塩添加ミリング液相剥離(SM-LPE)法により作製した.SM-LPE法によるGN作製では主に超音波洗浄機及び卓上遠心機を用いてGrのGN層を剥離及び分散させた.複合体試料の作製にはMg粉末,Fe粉末,前述のGr粉末及びGN粉末,rGO粉末を用いた.ボールミルには遊星回転ポットミル装置およびZrO2製ボールを用い,ボールと試料粉末の重量比は20:1とした.ミリング時間は,Mg-Feでは25時間,Mg-Fe-Gr及びMg-Fe-GN,Mg-Fe-rGOでは初めにMg,Feのみで20時間,その後各グラフェン系炭素材料を添加してさらに5時間ミリングした.これらの供試材に対して,x線回折,ラマン分光分析,電子顕微鏡観察,PCT測定を行った.その結果,SM-LPE法により作製したGNはラマン分光法による結晶構造解析より,rGOと比較して構造欠陥が少ないと判断した.次に,280℃,最大水素圧力0.99 MPaの条件下において,すべての複合体試料(Mg-Fe,Mg-Fe-Gr,Mg-Fe-GN,Mg-Fe-rGO)においてMgH2が生成され,水素を吸蔵した.各複合体試料の最大水素吸蔵量はそれぞれ3.45 wt. %,3.94 wt.%,4.02 wt.%,4.04 wt.%となった.さらに,PCT線測定により算出した水素放出速度はMg-Feが最も大きく,グラフェン系炭素材料を添加した複合体試料では減少した.また,0.15 MPaの窒素雰囲気下における水素放出温度は商用MgH2と比較して,約100 ℃低減した.

今後の研究の推進方策

平成4年度の研究成果の一つにMg-Feにグラフェン系炭素材料をメカニカルアロイングで化合して水素貯蔵材料を製造する場合,グラフェン系炭素材料がミリング助剤としての役割を果たすことが確認されたことがある.これまでMg-FeのMAでは容器内部に凝着するという問題点があり,ミリング助剤としてのステアリン酸の混合が必須であり,ステアリン酸は水素貯蔵に対しては効果がないため,化合後に焼結するなどの後処理を必要とした.一方,グラフェン系炭素材料はミリング助剤としての役割だけでなく,水素分子の水素原子への解離に有効な物質として除去の必要がない点でその優位性が確立されている.なかでもGNは他のグラフェン系炭素材料よりも水素貯蔵効果において若干優位であったが,製造過程が煩雑という問題点が残った.そこで,GNより入手が容易で,かつGNとほぼ同じ効果が確認できたrGOについて,即ちMg-Fe-rGOについてより実用化に向けて詳細に水素貯蔵特性を測定する.
一方,基板材料として,高分子材料であるポリエーテルエーテルケトン(PEEK),ポリイミド(PI),ポリカーボネート(PC),ポリプロピレン(PP),セロハン(PT)にガス透過度測定装置を用いて水素透過試験を行い,材料や結晶性による水素透過性能への影響について調べた.さらに,耐熱性の高いPEEKとPIには,膜厚や温度が水素透過性能へ及ぼす影響について調べたが結局PIが本目的に最適であった.そこで,更なるPIの水素透過特性を改善するために,パルスレーザーデポジション(PLD)法を用いて遷移金属薄層を形成し,遷移金属蒸着PI膜を作製し,水素透過係数を測定し他の複合薄膜と比較する.

次年度使用額が生じた理由

実験の購入に必要な物品に関して2,043円の余剰が生じた.次年度に執行する予定である.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] 高分子膜の水素透過特性評価2022

    • 著者名/発表者名
      倉田 健太郎,間野 大貴,櫻井 雅久,納冨 充雄
    • 雑誌名

      日本材料学会

      巻: 71, 11 ページ: 903-909

    • DOI

      10.2472/jsms.71.903

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Mg@グラフェンの構造解析2022

    • 著者名/発表者名
      細野 優登、納冨 充雄
    • 学会等名
      日本機械学会年次大会2022
  • [学会発表] PIおよびPEEK薄膜の水素ガス透過性及び窒素ガス遮断特性2022

    • 著者名/発表者名
      小栗 楓、納冨 充雄
    • 学会等名
      日本機械学会年次大会2022
  • [学会発表] Hydrogen Storage Material of Fe-Doped Magnesium Supported by Graphene2022

    • 著者名/発表者名
      Yuta HOSONO, Mitsuo NOTOMI
    • 学会等名
      2022 MRS Fall Meeting and Exhibit
    • 国際学会
  • [学会発表] PIを基板としたNiナノ積層膜における水素・窒素ガス分離特性評価2022

    • 著者名/発表者名
      小栗 楓, 納冨 充雄
    • 学会等名
      水素化物に関わる次世代学術応用展開研究会

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公開日: 2023-12-25  

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