研究課題/領域番号 |
20K04187
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
池永 訓昭 金沢工業大学, 工学部, 准教授 (30512371)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | DLC膜 / 機能性膜 / 耐熱性膜 / デュアルプラズマ / イオン照射 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,Si添加したDLC膜の摩擦係数と添加Si元素の存在形態を明らかにすることによってDLC膜の低摩擦発現メカニズムに新たな知見を得ることにある. 初年度はこれまでに作製した低摩擦なSi添加DLC膜の摩擦係数と膜構造および膜中原子の存在形態を調査する予定であったが,社会情勢により外部での摩擦係数の測定が困難であったこともあり,本課題の後半に実施予定であったSi添加濃度の高精度制御を実現するための装置開発に重点を置いて研究を実施した. Si添加濃度を高精度に制御するために,本研究ではスパッタリング成膜とプラズマイオン注入成膜の複合成膜技術を提案している.この成膜技術を実現するうえで,1つのチャンバー内で2つの異なるプラズマ(デュアルプラズマ)を生成することが必要となるが,その基礎研究はすでに実施済である.今回は複合成膜技術を用いて過去の研究データのあるPZT薄膜を対象として複合成膜装置の有用性を明らかにした. 本研究課題で提案している複合成膜技術はイオン照射とスパッタリング成膜を同時におこなうことができる成膜技術であり,将来的にはより高精度な組成制御を実現すること,さらには膜中に意図的に微結晶を形成することを期待している.今回PZT膜をスパッタ成膜すると同時にイオン照射をおこなったところ膜中の微結晶形成が促進できることが明らかになった.このことから,DLC膜中にSi原子をスパッタで供給する際に,イオン照射の効果を考慮することでこれまでにない機能性の発現が期待できる.また,スパッタ成膜中にイオン照射が可能であることから,印加電圧を適切に選択することで成膜中のイオンスパッタによってより高精度な組成制御が期待できる結果を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨今の社会情勢から研究実施順序を変更し,後半に実施予定の装置開発を本年度実施した.開発するスパッタリング/PBII&D複合成膜装置の基礎的な研究はすでに実施済であったため,本年度は購入したDC電源とマスフローコントローラーを装置に組み込んで複合成膜装置を製作した.また,製作した複合成膜装置におけるPZT膜成膜時のイオン照射とスパッタ成膜の同時処理の可否およびPZT膜中の微結晶形成に与える影響を検討した.その結果,開発した複合成膜装置はスパッタ成膜とイオン照射の同時処理が可能であることを確認し,イオン照射によって膜中の微結晶形成を促進できることを明らかにした.また,将来的に膜中の結合状態を調整できる可能性が示唆される結果を得た.これにより,印加電圧を調整することでイオンスパッタによって膜中のSiとCのスパッタ率の違いを利用した高精度な組成制御の可能性も示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
種々のSi濃度に調整したSi添加DLC膜をスパッタ成膜および複合成膜装置を用いてそれぞれ作製し,それらの摩擦係数および組成分析ならびにXPS分析をおこなう.これらの結果を踏まえて,摩擦係数と膜中のSi原子の存在形態を明らかにする. 上外部機関での上記の評価・分析が困難な状況となった場合は,本年度開発したスパッタ/PBII&D複合成膜装置における組成制御特性を明らかにすることに重点を置いた研究を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)実験に関わる消耗品の価格変更があったため. (使用計画)次年度購入予定の消耗品に充当する予定である.
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