研究課題/領域番号 |
20K04190
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
松坂 壮太 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30334171)
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研究分担者 |
森田 昇 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (30239660)
比田井 洋史 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (60313334)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 固体イオン交換 / ガラス / 銀 / ナノワイヤ / 析出 / 成長方向制御 / 内部配線 |
研究実績の概要 |
本研究は,ガラス中での金属イオンの移動現象を利用して,ガラス内部に直径数百nm程度の金属ナノワイヤを析出させる手法に関するものである.析出物は高い導電性を有しているため,「ガラス内部微細配線技術」等への応用が期待される.しかしその析出機構には未解明な点も多く,本手法を実用的な加工技術として昇華させるためには,ガラスに対する金属イオンの添加・移動・析出現象を学術的に解明し,学理に立脚した加工プロセスを設計・構築することが必要である.そこで本研究では,ガラス中での金属ナノワイヤの析出・成長機構を実験的・理論的に明らかにするとともに,ガラス内部の所望の位置・形状に金属ナノ析出物を形成可能な手法を開発し,工学的応用を図ることを目的とした.この目標を達成するため,令和2年度は添加・析出金属として銀を選定し,主として以下の3点に関する研究開発を実施した. 1) 析出物の成長挙動をリアルタイムで観察可能な実験装置を製作した.これにより電圧印加条件が析出物の成長速度に及ぼす影響の定量的評価が可能となった.また本装置の外部にレーザ照射光学系を設置することにより,レーザ局所加熱による成長方向制御(加熱スポットの移動による誘導)を試みた. 2) ガラスと電極との接触点近傍での電位分布が析出開始位置や成長方向に与える影響を実験的・解析的に検討し,析出物が所望の位置,方向に成長するために必要な条件を明らかにした. 3) 拡散律速凝集(DLA)モデル,絶縁破壊(DB)モデルに基づく析出物成長プロセスの数値解析を実施し,電極形状変化が析出物形状に与える影響を検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究により,当初予定していた実験や解析を行える環境が構築・整備され,実際に複数のアプローチから析出物の生成・成長制御を試みている.その結果,大まかな析出開始位置や成長方向の制御は可能になりつつある.ただし,現時点では析出形態が樹状晶のみにとどまっており,目標の1つである針状結晶の生成を実現できていないことから,「やや遅れている」との自己評価とした.なお,ガラスへの多層配線の埋設を意図して実験を行っていた際,ガラス内の一部の領域に,偶然,針状結晶に近い析出物を得ることができた.この結果は今後の研究遂行における大きなヒントになるものと考えており,現在,再現性の確認や析出条件の解明を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は以下の方針に沿って研究を進める方針である. 1) 前年度に引き続き,ガラスと電極の接触点近傍での電場制御を行い,析出開始位置を任意に決定できる手法の開発を目指す.またレーザ局所加熱による析出物の成長方向制御を行う.これらの併用により,任意の位置・方向に析出物を形成・誘導可能な手法を確立する. 2) 金属イオン添加領域へのナトリウムイオン添加といった手法を用いて,ガラス中の金属イオン濃度を自在に制御可能とし,金属イオン濃度が析出物形状に及ぼす影響を検討する.これにより,樹状晶や針状結晶といった析出形態の決定因子を明確化する. 3) 数値解析プログラムに時間や温度依存性の影響を取り込み,より現実に即した解析を可能とする.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では,局所加熱用のレーザ発振器の購入を予定していたが,波長は少し異なるものの,所属研究室の別プロジェクトで所有している発振器を借用することができたため,現在,予備実験を行っているところである.その結果を詳細に検討し,適切と思われる仕様を決定した上で,次年度に購入を検討したい.
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