研究課題/領域番号 |
20K04191
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
立野 大地 金沢大学, 設計製造技術研究所, 助教 (30714159)
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研究分担者 |
米山 猛 金沢大学, 設計製造技術研究所, 研究協力員 (30175020)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 熱可塑性CFRP / 歯車 / 不連続繊維 / 長繊維 / 鍛造 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は不連続炭素繊維強化熱可塑性樹脂(不連続CFRTP)で製作したビレットを用いて鍛造成形法により歯車を成形する方法を開発することである.ビレット内の繊維長を数十mmとして繊維を切らずに成形することで成形後に高い強度を得ることを狙う. 成形歯車は,モジュール3,歯数22,歯幅10mmの平歯車である.直径40mm,高さ35.5mmの円柱状のビレットを金型内で加熱してプレス機で上下から圧縮して変形を与え,圧力を保持したまま金型を冷却して歯車を成形する.ビレットの母材樹脂はPA6である. 2021年度は,1つの歯車内の個々の歯の強度のばらつきを減らすためのビレット内の繊維配向設計に取り組んだ.円柱状ビレットの芯材を繊維長10mm,幅10mmの一方向繊維CFRTPチップ(UDチップ)をランダム散布して加熱圧縮したものとして,その外周に軸方向のUDシートと円周方向のUDシートを交互に積層したビレットを製作した.このビレットを用いて成形した歯車は,歯に沿って厚さ1mmの繊維層が形成されていた.さらに,外周に円周方向のUDシートのみを積層したビレットに対して,歯の剛性および最大曲げ応力のばらつきを小さくすることができた.また,歯元曲げ試験で,歯の圧縮側で繊維が座屈してこのときに強度が決まることも明らかにした. 金型内に圧力センサを設置し,成形中の金型内圧力過程を測定した.その結果,場所による圧力差はほとんどないことがわかった.成形中の圧力過程として,金型内に材料が充満した瞬間に圧力が急上昇し,その後はプレスの保圧により高い圧力を保持しているが,金型温度が樹脂の再結晶化温度を下回ると同時に圧力が急降下してゼロになることをとらえた. 総じて,歯車の強度のばらつきを低減するビレットの繊維配向設計と成形中の金型内圧力過程を解明し,今後のビレット設計および成形条件探索に重要な知見を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度に予定していた研究は,1つの歯車内の個々の歯の強度のばらつきを減らすためのビレット内の繊維配向設計と,成形中の圧力過程の解明であった.これらの項目に対して「研究実績の概要」で述べた通り,今後の発展に向けた基礎的な知見を得ることができた.ビレット内の繊維配向設計としては,ビレット外周に軸方向と円周方向のUDシートを交互に積層することで,成形後の歯に沿った厚い繊維層が形成でき,歯の強度のばらつきを減らすことができた.これによりビレット設計と成形中の繊維流動への理解が深まった.また,金型内の圧力分布は均一であり,樹脂の溶融状態ではプレスの保圧によって圧力が保持されていることも確かめ,成形中の現象も解明した.全体として,ビレットの設計と変形についての理解が進み,成形現象の解明にも前進が見られ,進捗はおおむね順調と評価した.
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策の一つは,歯車内の繊維配向と歯の曲げ強度との関係の解明である.2021年度の研究により,歯の強度のばらつきを小さくすることはできたが,そのメカニズムの詳細は明らかではない.歯元曲げ試験での歯の圧縮側の繊維配向と強度とが密接に関係していると考えられるが,その領域の繊維配向分布を詳細に分析してこれらの関連を考察する. もう一つは,繊維の流動についてより詳細に調べることである.2021年度は歯の内部組織についてマクロな観察を行って流動を推定したが,より細かい領域での繊維の配向分布を計測し,そしてそれが場所によってどのように違いがあるかを明らかにすることで,ビレットから歯車に変形する過程での繊維の流動を明らかにする. 上記2つの方策により,繊維の流動挙動を明らかにし,ビレット設計法についての知見をまとめる.
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次年度使用額が生じた理由 |
発注した物品の納期が年度内に間に合わなかったため予算残が生じた. 翌年度にあらためて発注し,当該予算を執行する.
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