研究課題/領域番号 |
20K04194
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
大西 孝 岡山大学, 自然科学学域, 助教 (90630830)
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研究分担者 |
大橋 一仁 岡山大学, 自然科学学域, 教授 (10223918)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 円筒トラバース研削 / 研削抵抗 / 長尺工作物 / 振れ止め / 弾性変形 / テーパ形状 |
研究実績の概要 |
本研究では長尺工作物の円筒トラバース研削を対象に、次の3点を研究目標としている。a) 最適な振れ止めの設置位置と個数および研削条件の決定手法の確立、b) 振れ止めを押し込んでいる点で生じる工作物の段差を解消する手法の確立、c) 微小なテーパ形状の付与 研究初年度の2020年度はa)およびb)の研究目標に関する基礎的な成果が得られたため、2021年度は、a)とb)を統合し、最適な研削条件において研削実験を実施した。また、c)の微小なテーパ形状の付与について基礎的な実験を実施した。 まず、a)とb)を統合した研究成果について報告する。前年度に確立された、工作物へ振れ止め(工作物の表面を押すことで研削中の弾性変形を抑える装置)を作用させた際の弾性変形量の解析から最適な振れ止めの設置位置を決定するとともに、弾性変形が工作物の形状精度へ極力影響を与えないトラバース速度(工作物を軸方向に移動させる速度)を求め、研削実験を行った。その結果、一定のトラバース速度で、振れ止めを使用せずに研削した場合2μm程度の形状誤差(工作物の半径の差異)が生じたのに対し、提案法では形状誤差を0.5μm程度に抑制できた。これまで、振れ止めの使用方法や研削条件の設定は熟練技能者の勘と経験に依存してきたが、提案法を用いることで熟練した技能を持たない作業者(学生)でも高精度な研削に成功した。 また、c)の微小なテーパ形状の付与については、工作物軸方向位置における弾性変形が、目標のテーパ形状と同等に変化するトラバース速度を決定し、研削実験を行った。この手法の特徴は、工作物自体の弾性変形を積極的に活用することで、工作物の軸方向位置における砥石の切込み量を変化させ、工作機械の運動では実現しにくい精密な形状の制御を行う点である。事前に求めたトラバース速度で研削実験を行い、目標形状のテーパを工作物へ付与することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2021度は主に研究目標c)のテーパ形状の付与に注力し、最終年度の2022年度に3つの研究目標を統合し、形状誤差の最小化や微小形状の付与を行う予定であったが、研究が当初の予定以上に順調に進捗し、研究目標a)とb)を統合した研削手法の確立と、研削実験による効果の検証を実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
既に研究目標のa)からc)はほぼ達成したため、新たに、プログラムを用いた知能化研削システムの開発を行う。これまでの研究は、それぞれの研究目標に対して数式を立て、計算は汎用の表計算ソフトに各種の数値を入力し、そこで得られたデータをもとに研削実験を行ってきた。そのため、データの入出力に手間を要し、使用者とのインターフェースが良好とは言い難い点があった。また、それぞれの研究目標の知見を統合する際には、複数の表計算ソフトの間で数値を手入力で移行させる必要があった。 そこで、これまでに得られた知見を統合し、汎用性の高いプログラミング言語Pythonを用いて解析プログラムを作成し、作業者が必要とする加工時の目標(許容される形状誤差、振れ止めの使用の有無、所望するテーパー量など)を入力し、適切な研削条件(トラバース速度、振れ止めを使う場合は振れ止めの設置位置や押込み量など)を出力する知能化研削システムを開発する。これにより、本研究で得られた知見の散逸を防止するとともに、昨今の数理科学サイエンス教育に対応した学生の育成を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行により2020年度の研究活動や出張が大幅に制限されたことにより、2020年度の未使用額が大きかったため次年度使用額が生じた。2021年度は研究活動の制限が緩和されたため、研究の遂行および研究に必要な物品の購入を進めたが、引き続き、次年度も研究のより一層の推進と、適切な設備の購入、研究成果の発表などに充当していく。
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