本研究では長尺工作物の円筒トラバース研削を対象に、次の3点を研究目標としている。 a) 最適な振れ止めの設置位置と個数および研削条件の決定手法の確立 b) 振れ止めを押し込んでいる点で生じる工作物の段差を解消する手法の確立 c) 微小なテーパ形状の付与 研究初年度の2020年度はa)およびb)の研究目標に関する基礎的な成果が得られ、2021年度は、a)とb)を統合し、最適な研削条件において研削実験を実施した。また、c)の微小なテーパ形状の付与について基礎的な実験を実施した。 本年度は、昨年度の工作物へテーパーを付与する基礎な基礎的な研削実験を基に、目標形状のテーパを工作物へ付与する実用的な研削実験を行った。研削実験に先立ち、工作物の弾性変形を考慮したトラバース速度の決定手法を考案し、決定したトラバース速度に従って研削を行ったところ、直径20mm、研削幅120mmの研削面の左右40mmに2μmのテーパ(中央の40mmが平坦で、左右40mmが2μm下がるクラウニング加工)を実現した。 また、これまでは工作物の弾性変形だけを考慮して研削実験を行ってきたが、新たに工作物が研削面から除去される寸法生成挙動も解明するために、Pythonを用いた研削シミュレーションの開発に着手した。単純なトラバース研削において、工作物の弾性変形と、砥石の寸法生成挙動(砥石の幅方向の、どの部分で多く材料が除去されるか)を考慮し、研削後の工作物の形状を高精度に解析により高精度に推定で来た。特に、砥石が工作物から抜けていく側の端面で、工作物の弾性変形が徐々に低下することで、工作物から材料が多く除去されて生じる過研削「ダレ」を、解析により求めることが可能となった。
|