研究課題/領域番号 |
20K04195
|
研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
伊東 聡 富山県立大学, 工学部, 准教授 (00624818)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 回転基準球 / 校正 / マイクロプローブ / 三次元測定 / CMM / micro-CMM |
研究実績の概要 |
本研究は接触式マイクロプローブの先端形状をナノメートル精度で計測し,micro-CMM測定のナノメートルオーダ精度保証を目的としたマイクロプローブ校正法の開発に取り組んだ.寸法や形状偏差が既知の校正用基準球を使用する従来のプローブ校正法では,プローブ校正結果には基準球の形状誤差を含み,ナノメートル精度のプローブ校正は困難であった.校正用基準球の精度に依存することなく,また測定機上で外部センサを用いずに測定点座標の演算処理によってマイクロプローブ先端球の形状と直径を自律的に測定するために,回転基準器校正法と名付けた独自のプローブ測定法の開発を行った.回転基準器校正法では,校正用基準球を回転させながら基準器上にてプロービングを行うことで測定座標に含まれる基準器の誤差をシフトさせ,演算処理によってプローブ球と基準器の形状誤差を分離する. 当該年度は,前年度に実施した内挿法を用いた回転基準器校正法の有効性について詳細に検証を行うために,三次元測定機(Coordinate Measuring machine: CMM)と真円度測定機を用いた検証に取り組んだ.その結果,演算に用いる内挿法の違いにより算出形状に差異が生じることが確認された.また形状算出に使用する測定点数や測定条件と誤差の傾向を明らかにした.一方,積分処理により数百nmの誤差が生じることが確認され,演算処理の課題が明らかになった.またmicro-CMMによる測定では微差穴内部の非破壊三次元測定への応用を確認し,微細穴の直径や円の通り等を三次元的に測定できることが実験に基づいて確認された.本結果より,微細穴によるプローブ先端形状の校正の可能性を確認することが可能であった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は,当初の計画に基づいて回転基準器校正法によるマイクロプローブ形状測定の不確かさの評価を実施した.測定点数及び内挿法の条件を変更し,実機によるプローブ校正に基づいてプローブ先端球測定における不確かさの算出を行った.その結果,測定点数や内挿法による不確かさの傾向を明らかにし,測定条件の最適化の方針を明らかにすることができた.またプロービングの繰り返し性が測定不確かさの主な原因であることが確認され,micro-CMMの課題を明確にし,測定システムの改良に貢献した.また本研究で開発したmicro-CMMによる三次元測定を実施し,微細穴の非破壊内部測定に応用できることが確認された.この結果より,本micro-CMMが微細穴内部測定だけでなく,微細穴を用いたプローブ先端形状の構成においても有効である見込みを得ることができた.
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度における本研究課題の取り組みでは,内挿法や測定条件による測定誤差やCMMと真円度測定機を用いた実験による実行可能性を検証し,micro-CMMへの適用可能性を検証することができた.令和4年度はmicro-CMMに用いるマイクロプローブに対して,これまで開発した回転基準器校正法を適用し,プローブ先端の形状偏差のnm精度測定及び不確かさの評価に取り組む計画である.また微細穴を用いたプローブ形状測定にも取り組むことで,マイクロプローブ先端の形状測定に適した基準器形状に関する考察を行う.
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は新型コロナウィルス感染症の影響により,国内及び国外で開催された学術講演会がオンライン開催となり,旅費の支出が無かった.また半導体不足の影響により,測定システムに使用するセンサが年度内に納入されなかったため,次年度使用額が生じた.次年度使用額はステージの納品により解消される見込みである.
|