拡散レーザ中の物体の三次元6自由度運動を検出するために,透過型液晶フィルタを空間変調素子として用い,ボールレンズアレイを再帰鏡として用いたレーザ干渉計を構築した.令和2年度から3年度において,構築した干渉計において,測定対象物(ボールレンズアレイ)の光軸方向,光軸に垂直な二方向の計3方向の並進運動の測定に成功した.拡散レーザを用いるため,信号光強度は弱くなるが,運動検出には十分であった.また,運動物体の角度測定の内,ピッチング・ヨーイング角は,空間変調素子で適切なボールレンズアレイを選択し,使用することによって構成される測長干渉計を組み合わせることによって測定できた.ここまでの研究を国際会議で1件発表し,雑誌論文として1件発表した. 一方,ローリング角では,光軸方向の変位は生じないため,レーザ干渉計による変位計測によっては測定が困難であった. そこで,令和4年度は,1/2波長板を光が透過すると,偏光角が回転する現象を利用して,ローリング角の情報を得ることとした.再帰鏡は,光を検出はしないので,光を検出するためには,波長版を往復することとなる.1/2波長板を往復すると,回転角が0となってしまう.そのため,往復の光路で1/2波長板として働くように,実際には,1/4波長板を用いた. 実験中に,光源から再帰鏡へと到達した光は,そのまま検出器へ進むのみではなく,一部の光は,再度光源方向へ戻り,一往復余分な光路を経て,検出器へと進むことが分かった.一往復した光と二往復した光が干渉し,測定においてはノイズとなっていた. 一往復目の光と二往復目の光の干渉及び前述のローリング角測定を組み合わせた,一軸方向の変位及び一軸周りの回転角の同時測定を実現することができた.その結果は,国際会議において1件,報告した.この結果を3軸に拡張することによって,6自由度の測長速角が実現できる点で重要である.
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