研究課題/領域番号 |
20K04202
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
沼田 宗敏 中京大学, 工学部, 教授 (00554924)
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研究分担者 |
近藤 雄基 法政大学, 理工学部, 助手 (90835878)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ロバストフィルタ / スプラインフィルタ / 上位互換性 / ガウシアンフィルタ / フーリエ変換 / 高速M推定法 / Bスプライン基底関数 |
研究実績の概要 |
本年度は下記1), 2), 3) の3ステップを実施した. 1) 前処理1(高周波振動の抑制):研究代表者と研究分担者は高周波振動を抑制する手法として点対称拡張法を開発した(Precision Engineering, 2016).この手法をベースに,高周波振動を従来の1%以下に抑える手法を前処理1として構築した. 2) 前処理2(自然境界条件の適用):エンド効果防止のための有効な手法が,データ端でフィルタの重みを可変にする回帰型フィルタである.この回帰型フィルタに自然境界条件を適用することで,逆行列型のスプラインフィルタと同じ出力を得る手法を前処理2として確立した.スプラインフィルタの自然境界条件に関する研究業績(精密工学会誌, 2006)のある研究代表者が担当し,データ端における出力誤差を入力データのPV値に対し0.1%以下に抑えた. 3) 高速M推定法適用(周波数領域):高速化を図るため,高速M推定法の損失関数である2次Bスプライン基底関数の畳み込みを周波数領域で行う.この課題をBスプライン基底関数のフーリエ変換に関する研究業績(精密工学会誌,2005など)の豊富な研究代表者が担当した. これらの成果のうち,1)の前処理1と2)の実験結果については国内学会で口頭発表(精密工学会秋季大会,2020年9月)し,同理論・実験結果については英文論文に投稿し掲載された(Nanomanufacturing and Metrology,2021年1月).また3)の理論と実験結果について国内学会で口頭発表(精密工学会春季大会,2021年3月)した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2020年度は1)と2)のステップを実施する予定であり,2021年度は3)のステップを実施する予定であった. ステップ1) 前処理1(高周波振動の抑制):研究代表者と研究分担者は高周波振動を抑制する手法として点対称拡張法を開発した(Precis Eng., 2016).この手法をベースに,高周波振動を従来の1%以下に抑える手法を前処理1として構築する. ステップ2) 前処理2(自然境界条件の適用):エンド効果防止のための有効な手法が,データ端でフィルタの重みを可変にする回帰型フィルタである.この回帰型フィルタに自然境界条件を適用することで,逆行列型のスプラインフィルタと同じ出力を得る手法を前処理2として試行する.スプラインフィルタの自然境界条件に関する研究業績(精密工学会誌, 2006)のある研究代表者が担当し,データ端における出力誤差を入力データのPV値に対し0.1%以下に抑えることを目標にする. ステップ3) 高速M推定法適用(周波数領域):高速化を図るため,高速M推定法の損失関数である2次Bスプライン基底関数の畳み込みを周波数領域で行う.この課題をBスプライン基底関数のフーリエ変換に関する研究業績(精密工学会誌,2005など)の豊富な研究代表者が担当する. 2020年度の予定であるステップ1)の前処理1(高周波振動の抑制)とステップ2)の前処理2(自然境界条件の適用)の両方を達成し,ロバスト性と上位互換性を両立させたスプラインフィルタを実領域で構築できた.また,2021年度の計画であったステップ3)の高速M推定法適用(周波数領域)においても前倒しで実行し,ロバスト性と上位互換性を両立させたスプラインフィルタを周波数領域でも実現可能であることを確かめた.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は4)のステップを実施する予定であり,2022年度は5)のステップを実施する予定である.なお,ステップ4) およびステップ5) は当初の計画に対して,半年ずつ前倒しで実行予定である. (2021年度の研究計画) ステップ4) 2次元フィルタ高速計算法の確立:高速M推定法では計測データz = s(x)を z 軸方向に離散化し,2次元配列 f (x, z)を生成する.また適用する2次元重み関数は, x 軸方向にスプラインフィルタの重み関数,z 軸方向に高速M推定法の損失関数である2次Bスプライン基底関数を用いる.従ってフーリエ変換は計算量の大きな2次元フーリエ変換となる.3次元表面粗さ用ローパスフィルタの研究で2次元フィルタの高速計算に関する研究業績(精密工学会誌, 2015)のある研究代表者と研究分担者が協力して,高速フーリエ変換(FFT)をベースにした高速計算法を確立する.ステップ3)とステップ4)により,従来のロバストスプラインフィルタと同等の計算速度を目指す. (2022年度の研究計画) ステップ5) 上位互換性など4特性の検証(ベンチマークテスト・論文発表):上位互換性・ロバスト性・エンド効果・高速性の4特性を従来法と比較検証する.上位互換性は従来のスプラインフィルタの出力と比べ,入力データのPV値に対し0.1%以下の偏差を目標とする.また,ベンチマークテストを研究協力者である本学大学院生2名と実施する.研究成果は論文にまとめ,国内外で発表する.
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次年度使用額が生じた理由 |
国内での研究打合せは,新型コロナ感染症対策のためオンラインに切り替えた.また,成果を発表する学会への参加もすべてオンライン参加となった.これらの旅費計290,000円はすべて執行できなかった.旅費が執行できないため,デスクトップパソコン1台を追加購入(研究分担者)して実験の効率を上げた.このため物品費の予算770,000円に対し執行は865,262円となり,95,262円の予算超過となった.人件費・謝金は予算240,000円に対し約88%の執行211,190円となり,28,810円が執行できなかった.これは緊急事態宣言発令に伴い,研究協力者の大学院生2名が登校できない期間があったためである.「その他」は当初予算計上してなかったが,研究打合せができないため研究代表者・研究分担者間の郵送での物品送付が増え6,878円の出費となった.これらが次年度使用額216,670円が生じた理由である. <使用計画> ステップ4)の2次元フィルタ高速計算方の確立のための実験支援のため,院生3名(当初計画は2名)の研究協力を得る予定である(研究代表者).ステップ4)の信頼性を向上させるため,次年度使用額207,850円を追加の研究協力者(中京大学大学院生)1名の実験補助費(約100,000円)と研究協力者用のデスクトップパソコン(約117,000円)購入に充てる予定である.
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