本研究は、空気圧サーボの制御技術を応用して、超精密加工に用いられるエアタービンスピンドルの高機能化と、それによる切削加工の高精度・高効率化を実現することを目標として進められたものである。最終年度(2022年度)を含め、3年間の研究期間に得られた研究成果の概要は次の通りである。 1)ホール素子センサとMR流体可変剛性ダンパを用いて、エアタービンスピンドルの1000rpm以下の低回転領域における、安定した回転数制御の実現に取り組んだ。具体的には、MR可変ダンパの基礎特性試験として、MR可変ダンパの筐体にホールセンサを取り付け、MR可変ダンパへの印過電流と発生力・磁界の変化の関係を同定した。また、別のホールセンサを用いて回転数の計測・制御機構を構築し、1000rpm以下、特に100~500rpmの領域における回転数制御を実現した。また、今回使用した市販のMR流体ダンパの特性について、今回の用途に使用するための望ましい特性・今後の改善点を明らかにした。 2)非球面レンズ加工機に使用される電空ハイブリッド方式の超精密鉛直位置決めステージに、静圧空気軸受エアタービンスピンドルを装着し、バランスシリンダ内圧を空気圧サーボで制御することにより、鉛直方向の位置と力を制御する方法を提案し、ドリル加工に適用する実験を行い、提案方法の有効性を検証した。その結果、位置決めと力制御の性能については、ハイブリッド方式の長所を生かして、従来の(電動のみの)方式よりも大きな発生力を得られることや、制御系全体で見ると装置の総消費エネルギーは削減できること、などの効果が示された。 3)エアタービンの回転数を空気圧サーボと外乱推定オブザーバを用いて制御する方式を提案しているが、本研究では難削材のドリル加工において、回転数センサと圧力センサの信号を工具の折損予測・検知に使用できる可能性を示した。
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