研究課題/領域番号 |
20K04204
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研究機関 | 奈良工業高等専門学校 |
研究代表者 |
谷口 幸典 奈良工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (10413816)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 粉末成形 / 有限要素法解析 / Drucker-Prager CAPモデル / 一面せん断試験 |
研究実績の概要 |
金属粉末圧粉成形工程における様々な割れ発生事例の対処法として,有限要素法解析技術を活用したケーススタディが有用であるにもかかわらず,実生産現場での導入・運用が進んでいない.本研究課題では簡便な試験による降伏関数パラメータの同定手法を提案,一般化する.その手法の妥当性は複動プレス成形による成形割れ発生実証実験で検証する.主要な金属粉末について材料特性値データベースを構築し,パラメータ相互の依存関係の定式化を図る.降伏関数パラメータを同定するにあたり実際の設計現場において運用可能な試験機は存在しないため,まずはその試験手法を含めて①パラメータの簡便な同定手法を確立すること,その後,市場にある主要な粉末に関して②材料特性値データベースを作製すること,最終的に,型からの抜出し時の破壊に至るまでの③成形不良事例の「見える化」を図ること,の3点を目的とする. コロナ感染防止対策の観点から実験遂行が大きく制限されることになり、初年度に計画していた、種々の合金鋼粉末の降伏関数パラメータを同定することはできなかった。しかし、試験機の計測精度向上を図った結果、新たな実験式によるフィッティングが可能となり、特に側方向応力の挙動について既存の実験結果と解析結果のギャップが減少して、同定手法の改善を図ることができた。一方、解析ソフトウェアANSYSライセンスを用いることによるカップ形状の圧粉工程の解析についてはほぼ計画どおり実施できた.結果、パラメータ同定精度の向上によって、①これまで検出できなかった除圧過程の破壊発生現象を明らかにすることができた。②除圧過程および抜出し行程における破壊発生リスクにおいて密度分布の均一性との相関性を見出すことができた。 加えて、解析結果の実証実験を遂行するための簡易複動プレス機の設計製作を開始し、ほぼ完成させることができている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
長期にわたる登校禁止期間や、登校再開後も学生同士の接触機会の低減のために研究活動が大きく制限された。しかし、活動時間の減少によって結果的に、数値解析に必要なライセンスが学内の既存数で対応できた他、次年度以降実施予定であった解析結果の実証実験を遂行するための簡易複動プレス機の設計製作を前倒し開始することができた。予算執行計画の見直しを含め、簡易複動プレス機の製作にあたって、既存設備の万能試験機にサーボシリンダを組み込む予定であったが、別途調達したサーボシリンダを複動アクチュエータとして活用して試験機を製作し、次年度にサーボシリンダを取り付けるだけの状態まで完成させた。よって、本研究課題の進捗としてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
簡易複動プレス機の製作にあたって、試験精度の向上によって得られた除圧過程の解析結果を反映して、二年目においては当初計画よりも加圧能力の高いサーボシリンダを導入するものとして既に計画変更している。試験機は前述のとおりほぼ完成しており、新規導入サーボシリンダを購入することで速やかに完成できる見込みである。一方で、材料特性値データベースを構築するに十分な実験データの取得ができていないため、早急に遂行する予定である。なお、粉末因子による降伏関数パラメータの変化挙動については、新たに見出した実験式との間での整合性を確認しながら実験条件を設定していくことでより理論的な把握が可能となると考えている。実験式の妥当性は十分に検証できていないので、合わせて、試行錯誤的に実験データのフィッティングを遂行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染防止対策の観点から実験や学会参加が大きく制限されることになり、結果的に、数値解析に必要なライセンスが学内の既存数で対応できたため、その予算を次年度遂行予定であった簡易複動プレス機の製作費用に充てるものとして研究実施計画を変更したことによる。設計製作を前倒し開始した結果、当初計画よりも加圧能力の高いサーボシリンダを導入する予定である。
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