本研究がねらいとするのは,金属やセラミックス粉末を対象として圧粉工程設計現場に おける有限要素法解析の活用を推進することである.解析に必要となる降伏関数パラメータを同定するにあたり実際の設計現場において運用可能な試験機は存在しないため,まずはその試験手法を含めて①パラメータの簡便な同定手法を確立すること,その後,市場にある主要な粉末に関して②材料特性値データベースを作製すること,最終的に,型からの抜出し時の破壊に至るまでの③成形不良事例の「見える化」を図ること,の3点を目的とする.令和3年度においては、鉄粉末に加え、フェライト粉末について解析に必要な降伏パラメータの同 定が完了した.圧粉成形~抜出しまでの一連の行程をFEM解析し,内側フランジ(中空カップ)形状の成形~抜出し時において割れ発生に至る挙動を再現した. 成形においてはパンチおよび金型の速度比によって局所的に片押しや両押しになるため,フランジ内側角部の応力経路を金型の速度比で比較した結果,金型固定の場合にせん断破壊が生じることを確認した.これは実生産現場における破壊事例と合致しており,解析手法が妥当であることを示している.最終年度は市場に流通している3種の鉄系粉末について材料パラメータの取得と比較を行った結果,カタログ値の特性を反映するような降伏曲面が描かれ,解析結果も特性の違いを反映する挙動を示していたことから,材料特性データベースの構築指針を得た.研究期間中において,鉄粉末3種およびセラミックス粉末2種の材料特性を明らかにするとともに,簡易複動プレス成形による実証実験も実施可能とした一方で,添加潤滑剤によっても材料特性値が変化するため,今後,データベースの完成においては添加潤滑剤の材種が特性値に及ぼす影響の調査も必要となることがわかった.
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