研究課題/領域番号 |
20K04205
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研究機関 | 佐世保工業高等専門学校 |
研究代表者 |
川下 智幸 佐世保工業高等専門学校, 電子制御工学科, 教授 (00270380)
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研究分担者 |
坂口 彰浩 佐世保工業高等専門学校, 電子制御工学科, 准教授 (00332099)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 砥粒加工 / ディープラーニング解析 / 砥石画像 / 機上計測 / 深層学習 / 画像解析 |
研究実績の概要 |
CBN砥石(メタル,レジン)を用い,工作物SKD11(焼き入れ材)を対象としてドレッシング後から研削加工を実施した.その加工過程においては,砥石作業面の画像(全周同一位置)を機上計測により取得し,砥面の変化形態について解析を行った.解析には,畳み込みニューラルネットワーク(以下,CNNと記す)と呼ばれる深層学習(AI)の代表的な手法の1つを用いた.CNNでは,砥面状態を①ドレッシング直後,②砥粒切れ刃摩耗面増加過程,③切りくず付着(目づまり)発生領域,④突き出し量が少量により結合剤面が早期に最外周面に露出領域の4分類にわける学習器を構築した.その学習器では,各分類状況の画像をそれぞれ1500枚程度準備して機械学習を行い,その精度を評価したところ90%程度の高い精度で構築することができた.その後,その学習器を用いて2020年度に開発した,砥石作業面全体を対象として解析可能なソフトウェアを用いて,研削過程における砥面画像の変化状況について解析を行った.その結果,ドレッシング後から研削が進む過程において,4つに分類した砥面状態の占める割合は変化していることがわかった.特に③切りくず付着(目づまり)発生は,今回の工作物であるSDK11の場合は,付着と脱落を繰り返している場合が多く,過度に大きな付着が発生・成長している領域は極めて少なかった.また,④突き出し量が少量により結合剤面が早期に最外周面に露出する領域の発生割合が多くなると仕上げ面粗さには変化がみられない状況でも,工作物表面に「たたき目」のような砥石接触位置に起因する模様が確認でき,これが現れる前段階が,再ドレッシングのタイミングになるのではないかと推察している.次年度では,他の砥石,工作物を用いて検証実験に取り組んで行く.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度はCBN砥石を対象として良好な解析ができている.本年度は,研究対象の砥石をダイヤモンド砥石として,提案しているCNNを用いた砥石作業面の解析を行うことで,ドレッシング状況の良否,および,適切なドレッシングタイミングを判断できる機上解析システムの開発を進めて行く.
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今後の研究の推進方策 |
ダイヤモンド砥石を測定対象として,NC研削盤を用いて,機上計測により研削過程(ドレッシングの前後,研削過程,再ドレッシングまで)において,一定の研削量ごとに砥石作業面画像(同じ砥石位置画像)および研削特性(工作物仕上げ面粗さ,研削による振動等)を取得する.その後,その取得画像データを用いて,研削性能の低下(劣化)につながる現象(目づまり,脱落,突き出し量が少量により結合剤面が早期に最外周面に露出)が発生した砥面の状態(領域)を,現象ごとに分類する学習器(CNN)を構築する.そして,それぞれの研削過程で取得した砥石作業面の画像(約200枚~数1000枚程度)を用いて,研削過程において砥石作業面に発生する性能の低下(劣化)領域を抽出し,その発生現象の分類を行うことで,研削過程における性能低下の発生箇所・位置を視覚的,定量的に解析する.併せて,その結果と研削特性(工作物仕上げ面粗さ,研削抵抗,消費電力等)との関係を明確にする.このような実証実験を繰り返し行うことで,ダイヤモンド砥石において,以下の事項を明らかにして行く.①ドレッシングが適切に行われているかを判断する指針の確立.②研削過程で適切なドレッシングタイミングを見極める指針の確立.③ドレッシング直後の砥石作業面画像から,研削過程で研削性能低下につながる発生領域を予想できるようにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響があり予定していた旅費(学会参加,打ち合わせ等)が発生しなかった.2022年度も新型コロナウイルスの感染状況にもよるが,可能な限り対面での研究発表,研究打ち合わせ等を行って行く予定で,計画通りに進めることができると予想している.
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