研究課題/領域番号 |
20K04211
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
原田 泰典 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (30218656)
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研究分担者 |
田中 一平 兵庫県立大学, 工学研究科, 助教 (40781034)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ショットピーニング / 表面改質 / 接合性 / マグネシウム合金 / 熱可塑性樹脂 / セラミック / 耐食性 / 耐摩耗性 |
研究実績の概要 |
研究目標であるマグネシウム合金への表面特性改善のため、セラミックス硬質微粒子を含有した樹脂シートから構成する積層板の作製を試みた。セラミックス微粒子はアルミナやジルコニアである。基材は代表的なマグネシウム合金であるAZ31系合金を用い、合金基材への接合性に及ぼす積層板の厚さに及ぼす接合加工条件の影響について調べた。厚さ0.1ミリまでの純アルミニウム箔を用いて、熱可塑性樹脂シートをサンドイッチした数種類の異種積層板の作製を行った。おもに、接合界面における空隙やはく離を生じない加工温度や加工荷重などの加工条件について調べた。投射速度は標準的な加工速度を用い、投射時間を変化させて接合した結果、異種積層板の厚さは0.12ミリ程度まで基材に接合が可能であることがわかった。次に、マグネシウム合金基材の材質を変化させて、異種積層板の接合性に及ぼす基材の材質の影響について調べた。基材合金はAZ61系、AZ80系、AZX611系の3種類である。各合金基材に対して、おもに直径0.1ミリの硬質微粒子を含んだ異種積層体の作製を行った。合金基材へ積層板の接合を行い、断面組織観察と三点曲げ試験によって接合性の評価を行った。表面近傍断面の組織観察では、接合界面でのボイドやき裂は見られなかった。また、エネルギ分散型X線分析EDS機を用いた元素マッピングによる評価を行った。良好な接合界面であることが観察された。また、三点曲げ試験による接合面での破壊を行い、合金基材が破壊するまで変形させた。その結果、セラミックス粒子や樹脂シートはマグネシウム合金基材からはく離は見られなかった。また、摩耗試験機による積層板の摩耗量の測定を行った結果、約30%の改善あることがわかった。以上より、積層板の基材への接合性は高く、耐摩耗性が高いことがわかった。現在、基材表面に対する耐食性や耐摩耗性などの表面特性の評価を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マグネシウム合金の基材に接合する異種積層板の作製は、異種板の厚さや作製時の加熱温度などの条件がある程度の設定が出来たため、試験するための異種積層板の準備が計画通りに進めることができた。具体的には、前年度と同様に、新たに準備したマグネシウム合金丸棒から円板状試験片の作製を行い、また異種材料の純アルミニウム、樹脂シート、セラミック硬質微粒子から構成する異種積層板の作製を行った。異種板の厚さやセラミック微粒子の材質を変化させたが、これらを用いた作製において、とくに大きな問題はなく進めることができた。研空全体として、試験片の作製準備は研究計画に大きな影響はなかった。次に、マグネシウム合金基材への異種積層板の接合を行い、前年度に引き続き、接合性に及ぼす異種積層板の合計板厚の影響について調べた。光学顕微鏡による接合界面の状態について、また電子顕微鏡による接合界面の元素状態について、それぞれ調べた。各種顕微鏡による接合状態の評価は研究計画通りに行えた。次に、接合性の評価として、三点曲げ試験を行った。異種積層板を接合した円板状試験片から三点曲げ試験用試験片の作製を行った。短冊状試験片の加工において、硬質なセラミックス粒子の研削は少し加工時間を要したが、大きな問題はなく準備ができた。三点曲げ試験は順調に進めることができた。また、摩耗試験による耐摩耗性の評価を行った。硬質であるセラミックス微粒子の接合は耐摩耗性の改善に有効であることが得られた。これらの研究成果は学協会による講演会で成果発表を行い、指摘された追加試験すべき内容について研究を行った。以上より、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、おもに乾式研磨紙を用いた摩耗試験機による耐摩耗性の評価を行う計画である。押出し材であるマグネシウム合金だけでなく、鋳造合金であるAZ91系合金に対しても異種積層板の接合性について調べ、各種マグネシウム合金への異種積層板の接合性について調べる。また、異種板の厚さやセラミック粒子径の異なる異種積層板の作製を行い、耐摩耗性の評価を続けて行う。具体的には、さらに硬質微粒子であるセラミックス粒子の粒径や材質を変化させ、また樹脂シートの厚さや材質を変化させる計画である。試験が順調に進んだ場合、セラミックス粒子や樹脂シートにおける積層数を増加させて、接合性に及ぼす加工条件について調べる計画である。接合状態については、光学顕微鏡や電子顕微鏡を用いた組織観察について調べる。接合性の評価として、前年度と同様、三点曲げ試験や摩耗試験による評価を行う予定である。本年度は耐腐食性についても、塩水雰囲気中での腐食試験を行う計画である。これらの研究計画が順調に進んだ場合、セラミックス微粒子以外の硬質金属製微粒子やサイズを変化させて、同様の試験評価を行う計画である。最後に、現在までに得られた結果について、結果のまとめを共同研究者とともに行うとともに、学協会開催の講演会で成果発表や学術誌への掲載を積極的に行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内外の学会講演会や国際会議への参加を計画していたが、新型コロナウイルス感染症(COVID19)の影響によって全ての行事がオンライン開催となった。このため、次年度への使用額が生じた。今後、現地で開催予定の学会等へ参加する計画で、翌年度分として請求した助成金と合わせた使用を計画している。
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