研究課題/領域番号 |
20K04212
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
村田 泰彦 日本工業大学, 基幹工学部, 教授 (00200303)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プラスチック / 射出成形 / 金型 / 加熱・冷却ハイブリッド成形 / 赤外線ヒータ / 輻射加熱 / 炭素繊維強化熱可塑性シート |
研究実績の概要 |
炭素繊維強化熱可塑性樹脂CFRTPシートを加熱圧縮成形した後、圧縮成形品上にリブ等の立体形状を射出成形により付加し、高い比強度と良好な外観品質を有した複雑立体形状プラスチック成形品を成形する加熱・冷却ハイブリッド射出成形法が実用化されている。しかし、本成形法では、シートへの金型キャビティ面形状の転写などの成形加工現象の系統的な解明が遅れており、成形品の形状や外観に不良が発生した際に、抜本的な対策がはかれないことが問題となっている。そこで、本研究では、赤外線ヒータを用いたシートと金型キャビティ面の同時輻射加熱により、簡易的に加熱・冷却ハイブリッド射出成形が実施できる新規金型を設計・製作し、本金型を用いて、各種センサによる温度・圧力計測を援用しつつ、上記成形加工現象を系統的に解明することを目的としている。令和2年度は、シートと立体キャビティプレートとを同時に加熱することができるシートインサート機構と、リブが設けられたキャビティ入れ子の設計・製作を行った。そして、それらを組み込んだ金型と遠赤外線ヒータを用いて、ハイブリッド成形品が成形できることを確認した。また、上記プレートの加熱温度や圧縮成形完了から射出までの経過時間によって、シート表面にくぼみや織り目に沿った凹凸といった欠陥が生じることを確認した。さらに、シート表面に素線熱電対を貼付して、成形工程における温度変化を計測することにより、上記欠陥の発生原因を明らかにした。令和3年度は、シートの枚数とシートの圧縮率、プレートの加熱温度を変化させながら成形を行った。その結果、シートの枚数が2枚では、リブ部において繊維の織り目模様が乱れるものの、1枚の場合よりも表面欠陥が抑止されること、また、シートの圧縮率の増加に伴い、表面欠陥が抑止されること、さらに、プレートの加熱温度の上昇に伴い表面欠陥が抑止されることを明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は、令和2年度に設計・製作したCFRTPシートのインサート機構を備えた金型と、遠赤外線ヒータとを用いた加熱・冷却ハイブリッド射出成形プロセスを用いて、CFRTPシートの枚数とシートの圧縮率、立体キャビティプレートの加熱温度が、成形品の外観に影響を及ぼし、シートの枚数が多いほど、シートの圧縮率が増加するほど、成形品のくぼみや織り目に沿った凹凸といった表面欠陥が抑止されるものの、一方、シートの圧縮率が高すぎると、織り目模様が乱れることを明らかにすることができた。また、プレートの加熱温度の上昇に伴い、くぼみと織り目に沿った凹凸が抑止されることも明らかにすることができた。ただし、当初予定していた射出率、保持圧力などの成形条件が成形品の外観に及ぼす影響については、検討を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、令和3年度に検討を行うことができなかった射出率、保持圧力などの成形条件と、成形品の外観および形状・寸法精度や表面性状、繊維の配向状況との相関関係を明らかにする。また、これまでは、母材がアクリルのCFRTPシートについて検討を行ってきたが、ポリカーボネートなどのアクリルよりも融点が高い樹脂を母材としたCFRTPシートにおける検討を行う。さらに、成形過程におけるCFRTPシートの温度を計測しつつ、得られた結果よりCFRTPシートの加熱・冷却ハイブリット射出成形現象について総合的に考察する予定である。 なお、得られた成果は、一般社団法人プラスチック成形加工学会、あるいは、精密工学会、型技術ワークショップ等にて発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めて行く上で必要に応じて研究費を執行したため当初見込み額と執行額は多少異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通り計画を進めて行く。
(使用計画) 令和4年度予算は、CFRTPシートや射出成形用樹脂の購入費、学会発表のための旅費に充てる予定である。
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