研究課題/領域番号 |
20K04216
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研究機関 | 大同大学 |
研究代表者 |
吉田 昌史 大同大学, 工学部, 准教授 (40460612)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 窒化アルミニウム / 放電 / 低温 / アルミニウム / 窒化 |
研究実績の概要 |
本研究では,アルミニウム表面への窒化アルミニウム皮膜の短時間生成技術として,放電を利用した窒化法に注目している.放電を利用することにより,短時間で窒化アルミニウムを生成できることがわかってきている.液体窒素中で放電を発生させる表面窒化法をアルミニウムに適用し,窒化アルミニウム皮膜形成における低温液体中放電プラズマの効果を明らかにし,傾斜構造化窒化アルミニウム皮膜の作製方法の確立を目指している. 液体窒素中および気中で放電を発生させ,放電時の放電面直下の被処理材の温度を測定した.窒素ガス及び大気中での放電では被処理材温度が大きく増加するが,液体窒素中ではほとんど温度が変化しなかった.形成される窒化アルミニウムは,液体窒素では六方晶のものが生成され,大気中・窒素ガス中でも酸化物とともに六方晶の窒化物が生成されることを確認した.膜厚測定を行ったところ,放電中の被処理材の温度が高い方がより厚い膜が生成される傾向があった.ガスの動粘度や基材の溶融域等に影響していると考えられる.さらに,窒化アルミニウムの生成に及ぼす極性の影響について検討した.液体窒素中,大気中,窒素ガスの各雰囲気中で実験を行ったところ,いずれの雰囲気でも―極の方に窒化アルミニウムが堆積し,+極の方は材料除去が行われた.極間に供給するエネルギーの配分が異なることが原因と考えられる.これらの実験結果を基に,窒素ガス雰囲気中で放電が可能な実験装置を製作した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルミニウム電極を用いた放電実験から,皮膜生成条件および窒化アルミニウム生成に及ぼす極性の影響を明らかにすることができた.また,被処理材温度が窒化アルミニウムの厚さに影響を及ぼすことが明らかとなった.さらに,基礎実験から放電雰囲気の影響について検討し,得られた皮膜組織を明らかにすることができた. 被処理材の温度を変化させた状態で放電を発生させることができる装置を製作することもできた.当初研究計画では,微小部X線回折を外部で行う予定であったが,依頼先の機器が故障し実施できなかった.このため,別の機関でX線回折を行った.その結果,経費を抑制することができた.経費削減分は顕微鏡観察のための機器に充当する予定である.これにより,より快適に実験ができる環境を構築することができる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,放電雰囲気の影響の大概を把握できたが,その詳細は十分なものとは言えない.本年度に製作した装置を用いて,雰囲気を精密に制御するとともに,より広範囲に温度変化を与えた実験を行い,処理温度が放電プラズマ窒化反応に及ぼす影響を明らかにする.また,低温液体による冷却の効果の調査を行う.皮膜構造と液体温度の関係を明らかにするための分析用サンプルの作製も行っていく計画である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初研究計画では,微小部X線回折を外部で行う予定であったが,依頼先の機器が故障し実施できなかった.このため,別の機関でX線回折を行った.その結果,経費を抑制することができた.また,学会発表等がオンラインであったため,旅費の支出がなくなった.経費削減分は顕微鏡観察のための機器に充当する予定である.これにより,より快適に実験ができる環境を構築することができる.
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