本研究では,アルミニウム表面(Al)への窒化アルミニウム皮膜(AlN)を極めて短時間に生成する技術として,放電を利用した窒化法に注目している。放電現象を利用することにより,短時間でAlNを生成できることが,これまでの研究でわかってきている。液体窒素中で放電を発生させる表面窒化法をAlに適用し,AlN皮膜形成における低温液体中放電プラズマの効果を明らかにし,傾斜構造化AlN皮膜の作製方法の確立を目指している。 2022年度はグラファイト電極を用いて放電を発生させ,処理雰囲気が皮膜の形成に及ぼす影響について検討した。液体窒素中で放電を行った場合は,AlNの生成が可能であるが,窒素マイクロバブル水,尿素水を用いた場合は,AlNは得られなかった。発光分光計測において,液体窒素中での放電では,N2+の発光が確認できたが,液体窒素以外の溶液からはN2+のような励起種は確認できなった。窒素励起種の生成がAlN生成に必要であることが分かった。また,窒素ガスおよび大気中の各種雰囲気で得られたAlNの組織を観察したが,液体と気体で得られる組織はほとんど変化が無かった。なお,液体温度と皮膜構造の明確な関係を見出すことはできなかった。Al電極を用いて,大気中・窒素ガス中・液体窒素中で放電を発生させ,発光分光測定を行った。いずれの条件でも,Alの発光のみ確認され,N2+は認められなかった。Alの発光が強いためであり,処理雰囲気や温度でのプラズマ状態の違いを明らかにすることはできなかった。 放電現象によりN2+を生成させ,Alと反応させることで短時間で容易にAlN皮膜の形成できる。使用する電極によりAlNの構造を変化させることができ,皮膜の傾斜構造化の可能性を見出すことができた。この技術の実用のためには,最適放電条件など開発すべき要素は多々あるが,AlNの短時間生成法を提案することができた。
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