研究課題/領域番号 |
20K04217
|
研究機関 | 広島工業大学 |
研究代表者 |
桑野 亮一 広島工業大学, 工学部, 准教授 (30709134)
|
研究分担者 |
日野 実 広島工業大学, 工学部, 教授 (70510486)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 異種材料接合 / 半導体レーザ / 熱可塑性エラストマーインサートシート / ポリアミド樹脂 / A5052 / 陽極酸化 |
研究実績の概要 |
初年度は,(1)異種材料の接合加工を実施するためのレーザ接合装置の構築,(2)異種材料接合の品質を左右する熱可塑性エラストマーインサートシートの開発,(3)異種材料接合の高結合化に不可欠なアルミニウム合金の(陽極酸化)表面処理の検討とそれらの技術確立に重点をおいて研究活動を行った.これらの3つの主要な検討項目について,着実な実現と技術蓄積が得られた.結果の一つとして,A5052(アルミニウム合金)に陽極酸化処理(電解液:リン酸)を施す適正条件領域を見出すことができた.それによって,その表面処理を適用したA5052とポリアミド樹脂の間に熱可塑性エラストマーインサートシートを用いる異種接合について,半導体レーザ加熱での異種接合が可能となった.異種材料継手の強度は最低でも4 MPaが得られた.このようにレーザによる異種材料の接合方法が可能となったことから,接合密着性,破壊の挙動,結合力向上のための基礎的な実験結果を評価することができた.さらにA5052(アルミニウム合金)の表面状態の評価から,材料の活性化に及ぼす影響は,その最表層の状態が深く影響する検討結果が得られており,さらなる高結合化に向けての研究の方向性も得られた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究当初は,加工装置の構築は順調であったが,熱可塑性エラストマーインサートシートを用いたポリアミド樹脂とA5052(アルミニウム合金)の接合は困難であった.原因として,特にA5052(アルミニウム合金)の表面が接合に不向きな状態であることがわかった.そこで,A5052に陽極酸化処理(電解液:リン酸)を行い,接合密着性を向上させた結果,異種材料継手の強度を最低限4 MPaまで実現することができた.樹脂とアルミニウム合金の異種材料をヒータ熱源で接合すると,加熱中に樹脂側の変形や溶融などを生じることから,一般的にはそれらの接合は難しい.一方,本研究のレーザを用いる接合方法では,十分な接合強度には至っていないが,異種接合を実現できた. 次年度以降は,引き続き結合力向上のメカニズム解明に加え,それを支える表面処理技術の検討とその技術確立を含めた展開を予定している.
|
今後の研究の推進方策 |
ナノ秒以下の短パルスレーザを用いて,陽極酸化皮膜上への接合密着性向上層の創製による効果とその技術確立を計画している.主な検討内容は下記のとおり. ・短パルスレーザ照射による表面形状の創製と接合力への影響 ・表面形状と接合力の評価 ・A5052の保管状態(温度,湿度など)の及ぼす接合力への影響
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品費に関する当初計画では,接合加工装置について,ヒータ加熱とレーザ加熱の2種類を構築する予定であった.ところが,A5052の表面処理の効果を見出せたことで,レーザ加熱方式による異種材料接合の研究を集中的に展開できるようになった.そのため,ヒータ加熱装置およびその周辺機器などを現有機器で流用することが可能となった.また,新型コロナウィルスの影響によって,国内および国外の学会が中止や開催延期などになり,旅費や英文校正などの経費についても未使用が発生した.そのような理由から,当初計画からの費用に差を生じた. 差額分については,短パルスレーザ装置の購入に対する使用を計画している.本機器の導入により,A5052の表面創製と接合密着性向上の効果についての検討が可能となる.
|