軽量化の観点から部位毎に厚さを変えた金属部品の需要が増えており、従来のプレス工法では成形荷重が高くなり加工が困難になる。この課題に対して、本研究では水平方向に揺動動作を与えることで加圧方向の変形抵抗を低減して荷重を低減する手法を開発する。令和3年度までに円柱試片の圧縮において、荷重の低減に寄与する主要なパラメータを見いだした。これをもとに、令和4年度は板厚3mm、直径18mmの純アルミニウム円盤に対して、その端部(幅1mm)を50%減肉する加工を行った。円柱試片で最大35%の荷重低減効果が得られた揺動条件を適用したが、円盤材では8%程度しか荷重が減少しなかった。等価な揺動条件を検討した結果、揺動振幅を増やす、または、圧下と揺動の速度を下げることで18%まで荷重低減率を向上させることができた。しかし、円柱試片に比べれば半分程度の荷重低減効果しか得られなかった。その原因として、円柱試片に比べて①揺動に対する減肉部の拘束が不十分であることと、②揺動の抵抗が大きいことが推察された。①に対しては工具の加圧面に浅い溝を与え、②に対しては円盤の寸法を小さくして実験を行った。しかし、荷重低減率はFEM解析で予測された数値ほど改善することはできなかった。①により水平方向の揺動が加圧部に伝わるようになったが、それによって工具を揺動させる抵抗が増加することがFEM解析より判明した。揺動抵抗を減らすために②で寸法を小さくしたが、その効果が相殺されてしまったためと考えられる。なお、FEM解析では荷重低減率は円柱試片と変わらない程度まで向上したので、この問題は揺動抵抗に対するアクチュエータの出力と装置の剛性に起因すると考えられる。すなわち、加工寸法をさらに小さくする、もしくは、アクチュエータの選定と装置の剛性を見直すことで対処可能であり、工法の本質に関わる問題ではないと考えている。
|