研究課題/領域番号 |
20K04219
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研究機関 | 富山高等専門学校 |
研究代表者 |
浅地 豊久 富山高等専門学校, その他部局等, 教授 (70574565)
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研究分担者 |
中村 翼 大島商船高等専門学校, 電子機械工学科, 准教授 (10390501)
太田 孝雄 奈良工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (80353267)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イオンビーム / 電子サイクロトロン共鳴 / マイクロ波 / ウィーンフィルタ |
研究実績の概要 |
R2年度の計画としては,①イオン源のマイクロ波を高周波化することによってイオン生成量の向上を図ること,②3次元電磁場シミュレーションにより装置改造を行い,直進性の高いイオンビームを実現すること,③アルミニウム蒸発源の蒸発源を試作し,基礎実験を行うことであった. ①については,マイクロ波周波数を1.2GHz帯から2.45GHz帯へ高周波化し,マイクロ波を導入するアンテナの再設計を実施した.高周波化によって電子サイクロトロン共鳴の磁場条件が比例して上がるため,磁場シミュレーションによる永久磁石の設計変更も行った.そのマイクロ波と新たに製作した永久磁石を用いてプラズマ生成を確認した. ②については,有限要素法3次元電磁場シミュレーションソフトを新たに導入し,イオンビームを生成する引出電極形状の違いによるビーム軌道計算を行った.また,R3年度に行う予定であったイオン分離の軌道計算による質量分離器(ウィーンフィルタ)の電極形状再設計を行った.イオンビームの通過方向に電極を湾曲させることで均一な電場を実現できた.その電極を製作するとともに,磁石ヨークの追加改造なども実施した. ③については,高温管状炉を用いてアルミニウムの真空中での蒸発条件を検証した.汎用的な管状炉は1100℃が連続運転の上限であるため,その前後での蒸発実験を行った.その結果,1050℃では十分な蒸発量は確保できないが,1100℃になると目視で周辺への付着物が確認できるほど蒸発量が確認できたため,R3年度,実際にイオン源に取り付けるための蒸発源の設計製作を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
R2年度はコロナの影響もあり実験については遅れが発生したが,シミュレーションはR3年度の分も一部先行して実施できた. ①イオン生成量の向上については,高周波化によるプラズマ生成までは確認したもののイオンビーム引き出し実験までは実施できなかった.R3年度に実施する. ②イオンビームの直進性向上についても実験までは進まなかった.シミュレーションはR3年度予定分を先行して実施するなど十分な進捗状況であった. ③アルミニウム蒸発源についてはR3年度に設計製作予定であり,R2年度はその基礎実験を行う予定であった.簡易的な蒸発源を製作し,汎用管状炉で実現可能な1100℃での蒸発に目途がついたので予定通りであったと言える. 全体的には実験を中心にやや遅れているが,R3年度に取り戻せると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
R2年度の実験の遅れを取り戻すために,R3年度はまず高周波化したイオン源で生成されるイオンビームの電流測定の準備を進める.ウィーンフィルタの電場計算は終了しているため,磁場計算を進めウィーンフィルタの改造を実施する.このウィーンフィルタを本イオンビーム装置と大島商船高専イオンビーム装置に取り付け,質量分離性能の検証を行うとともに,一般的な扇型質量分離器との比較実験を行う.アルミニウム蒸発源については基礎実験が終わっており,その結果をもとにまずは大島商船高専のイオンビーム装置に設置可能な蒸発源を製作し,アルミニウム多価イオンビームの生成実験を行う. R4年度は,当初の予定通りアルミニウム多価イオンのマイクロビーム化実験を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
アルミニウム蒸発源の基礎実験装置を既存の物品で構成し,実験を行った.R2年度の残予算は,R3年度にイオン源に取り付ける蒸発源の試作器を製作するため,その際に使用する.
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