研究課題/領域番号 |
20K04221
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研究機関 | 静岡県工業技術研究所 |
研究代表者 |
中野 雅晴 静岡県工業技術研究所, 浜松工業技術支援センター光科, 上席研究員 (90707837)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 表面粗さ / 表面性状 / 測色 / イメージング / 色彩計 / 非接触 / 品質工学 |
研究実績の概要 |
本研究では、試料表面の色を高精度にイメージング測定する(色彩計測)ことで、短い時間で表面粗さを定量的に推定する方法を確立する。そのための検討として、本年度は以下の項目について実施した。 ①粗さ測定範囲を拡大させる照明・撮影光学系の検討 本研究の色彩計測による粗さ推定では、2次元色彩計で測定した試料表面の測色値を色表現で用いるxy色度図にマッピングし、その測色値の分布(以下、色分布)が粗さによって異なる現象を利用する。測定システムにおいて、撮像レンズの焦点距離と絞り値、測定画像の画素分解能、および試料角度が、測定感度(粗さの増加に対して色分布の拡がり幅が変化する割合)に与える影響について評価した。比較する粗さパラメータは算術平均高さSaとし、対象とする粗さ範囲はサブμm~10μm程度とした。レンズの焦点距離は感度に顕著な影響を与えなかったが、絞り値は小さい方が、高感度であることがわかった。また、画素分解能を細かくすると感度が向上した。試料角度を変えて感度を比較した結果、正反射角の角度から撮像すれば、試料面が±12.5度以内で傾いた場合でも測定値の差が12%以内に収まることを確認した。 ②粗さパラメータと表面画像の色分布との相関評価 xy色度図の色分布の比較指標を、xまたはy方向の拡がり幅から、分布が最も拡がる方向の拡がり幅に変更することで、感度が改善した。また、放電加工面(ニッケル)と、複数の加工条件で作製したブラスト加工面(アルミ)の測定を比較した。粗さが小さい領域(Sa≦10μm)では、放電加工面と同様にブラスト加工面でもSaと色分布拡がり幅に線形関係が得られることを確認した。感度は加工法によって異なり、ブラスト加工面では加工に使う投射材の違いが現れた。また、目の細かさを表す粗さパラメータSalでも線形性が確認され、Saと同様に色分布から推定できることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①粗さ測定範囲を拡大させる照明・撮影光学系の検討 品質工学のパラメータ設計手法を用いて、粗さに対して色分布を大きく変化させる照明・撮影システムの因子を明らかにし、システムを最適化した。また、曲面試料に対応するための基礎検討として、試料角度と測定感度との関係を調べ、試料面の傾きが±12.5度以内のとき測定値の差は12%以内であることを明らかにした。精度向上のためには角度から測定値を補正する方法が必要となるが、具体的な応用先が決まってから目標値を定め、その検討を行う。以上のことから、本項目を概ね順調と判断した。 ②粗さパラメータと表面画像の色分布との相関評価 表面加工法が異なる試料を用いて、粗さパラメータと色分布との関係を評価した。高さと目の細かさを表す粗さパラメータと相関があることを明らかにした。色分布の比較は、分布が最も拡がる方向の幅を比較する方法が有益であることを示した。現在、粗さ範囲の拡大や精度の向上を目指し、複数の色分布の評価指標を用いて多変量解析等で粗さを推定する方法を試みているが顕著な改善効果が得られていない。このことから、本項目をやや遅れていると判断する。 ③大面積粗さ測定システムの構築と性能評価 照明と色彩計間の角度と試料角度を調節でき、画素分解能を可変できる測定システムを構築した。本測定システムで次年度行う精度等のシステムの性能評価と課題抽出は可能であると考えている。このことから、本項目を概ね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
②粗さパラメータと表面画像の色分布との相関評価 色分布拡がり幅の他に色分布の評価指標を増やすことで、推定可能な粗さパラメータの種類と粗さ範囲の拡大を目指す。さらに、多変量解析等を用いて精度向上を試みる。また、本方法による表面粗さ測定を広く普及させるために、2次元色彩計の代替として一般的な画像検査用カラーカメラを用いた粗さ推定の検討を研究計画に追加する。 ③大面積粗さ測定システムの構築と性能評価 構築した測定システムで性能評価と課題抽出を行う。具体的には、測定ばらつきを評価し、測定感度と精度の関係を明らかにする。また、精度評価の結果を踏まえて、測定にかかる時間(時間/面積等)を見積もる。計画では試料の走査機構を自動化する予定であったが、測定システムを小型化できれば機器を走査する方式も想定されるため、試料走査機構は手動の状態で性能評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
測定システムに用いる予定の部品の納期が、コロナ禍の影響により年度末に間に合わず、次年度期初に発注することにしたため未使用額が発生した。 旅費とその他経費(学会参加費)は、コロナ禍の影響により出張が制限されたこと、学会発表(オンライン)が2回であったことを理由に未使用額が発生した。コロナ禍の状況にもよるが、次年度は学会発表と実験のための出張に使用する予定である。 本年度の未使用額は、次年度の研究費と合わせて、色彩計測による測定システムを構成する部品や試料等の購入に使用する予定である。
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備考 |
(発表者名)中野雅晴、(発表標題)カラーイメージングによる表面粗さ測定法の開発-品質工学による測定系の最適化-、(発表会名)令和3年度 静岡県工業技術研究所浜松工業技術支援センター 研究発表会(発表年月)2022年3月
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