本研究では、試料表面の色をイメージング測定することで、短い時間で広い領域の表面粗さを定量的に評価する方法を確立し、以下について検討した。 ①粗さ測定範囲を拡大させる照明・撮影光学系の検討:本手法では、2次元色彩計で測定した試料表面の測色値を色表現で用いるxy色度図(CIE1931)にマッピングし、その分布(以下、色分布)を比較した。測定感度(粗さに対する色分布拡がり幅の変化量)が高く、かつ、測定ばらつきが小さくなるように、光源色、撮像レンズ、照明・撮像角度、測定画像の解像度を最適化した。また、評価に必要な面積は、2.5mm角以上あればよいことが分かった。曲面試料を想定し、試料角度と測定感度との関係を調べた。試料面の傾きが±12.5度以内であれば測定値の差が12%以内に収まることを確認した。 ②粗さパラメータと表面画像の色分布との相関評価:放電とブラスト加工面の試料を用いて、共焦点顕微鏡で測定した表面粗さと色分布の関係を評価した。粗さパラメータの算術平均高さSaは、サブμm~10μmの範囲で、色分布が最も拡がる方向の幅と線形関係が認められた。また、面内方向の目の細かさを表す粗さパラメータのRSmとも強い相関があることが確認された。さらに、多変量解析を用いて色分布を比較すると粗さの推定精度が1.3倍改善した。一方、2次元色彩計の代替として一般的な画像検査用カラーカメラを用いた場合、測定感度は0.7倍に低下したが、同様な検査が可能であることが分かった。 ③大面積粗さ測定システムの構築と性能評価:2次元色彩計を用いて、20cm×15cmの領域を約1秒で計測するシステムを構築した。粗さと色分布の拡がり幅の関係を表す検量線を作成し、測定感度と検量線からのばらつき量から粗さの推定精度を見積もった。測定領域の中心付近では、Sa=0.7μm~11μmの範囲で、精度はSa=±0.9μmであった。
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