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2020 年度 実施状況報告書

高専発 超電導磁気ギア搭載 宇宙用掘削ドリルの基礎研究開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K04233
研究機関阿南工業高等専門学校

研究代表者

原野 智哉  阿南工業高等専門学校, 創造技術工学科, 教授 (20332067)

研究分担者 綿崎 将大  広島商船高等専門学校, その他部局等, 助教 (50791125)
田中 淑晴  豊田工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (70455137)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード磁気歯車 / ネオジム磁石 / 減速比 / 軸方向磁場 / 伝達効率
研究実績の概要

本科研費により,低温真空チャンバーの試作が広島商船高専綿崎研究室で完成し,0.35Pa低真空,19.5K以下までのチャンバーおよび磁気ギア実験装置が完成した.
大気圧磁気ギア伝達性能実験(磁気ギア直径100㎜かつ減速比3/4)が令和2年12月までに実施され,予想を上回る最大伝達トルク2Nmが伝達可能であり,最大91%の伝達効率が得られることが確認された.磁気ギアの構成としては,通常同軸磁気ギアを採用するところだが,平行軸磁気ギアとした.平行軸磁気ギアを採用した理由は,低温真空環境下に片側の磁石円板を曝露し,低温真空環境に暴露する磁石円板に将来ドリルを装着することを念頭に置いている.そのため,第1段階として,低温真空環境に暴露する磁石円板は,低温真空チャンバー内に配置しやすいよう配慮し,本実験では固定とした.
令和3年3月4~6日にかけて真空度0.8Pa,低温-50℃の低温真空環境下に固定側磁石のみを低温真空環境に暴露する宇宙船内あるいはローバーから操作することを念頭においた低真空・低温 磁気ギア駆動実験に成功した.0.8Paおよび-50℃の環境においても磁気ギア最大伝達効率90%以上の伝達効率が得られることを実証した.今後,磁気ギア全体を低温真空チャンバー内に格納した実験と超電導磁石の多磁極化の検討がチーム内にて本格的に行われる計画となった.
なお,磁気ギア実験装置については,現在並行軸構造としているが,今後チャンバー内設置のため同軸構造の磁気ギア実験装置の試作も完成しており,大気圧実験を実施する予定となっている.また,磁気ギア過渡応答解析によるシミュレーションによる伝達効率と実験結果については,ほぼ同じ値が得られており,今後解析による詳細設計検討が可能となる予定である.本研究内容の一部は,令和3年3月9日日本設計工学会四国支部2020年度研究発表講演会にて発表済みである.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

低温真空環境下における磁気ギア駆動実験が終了し,以下のように目標を達成しつつある.科研申請書に記載したFASE1の達成度は以下のように3項目のうち2項目をほぼ達成した.
①大気中における地上最強のネオジム磁石N45を用いた直径100㎜の磁気歯車を用いて,大気中において減速比3/4(増速)における回転速度,伝達トルク,伝達効率を過渡応答磁場解析シミュレーションと実験の双方から明らかにできた.また,被駆動最大トルク2Nm以上であった.(ほぼ達成)
②-50℃以下かつ0.8Pa以下の低温真空チャンバー内において,磁気歯車の固定磁石円盤を冷却タワーに固定し,中間磁性媒体円盤を被駆動出力軸とし,性能試験を実施できた.
大気圧実験とほぼ同じ動力伝達性能2Nm,最大伝達効率90%以上が得られている.(ほぼ達成)
③冷却タワーに設置した磁気歯車の固定磁石円盤を超電導材料に変更し着磁コイルにより着磁し,中間磁性媒体の被駆動出力特性を実験する.
本項目について令和3年度に計画実行中であり,ネオジム磁石を利用した同軸磁気ギアの実験装置の開発を先行して実施している.実験が完了すれば,低温真空チャンバーへの接続への設計変更と試作を実施する.超電導材料の着磁方法についての検討を現在実施中であり,今年度中に多磁極化する方法を確立する.

今後の研究の推進方策

今後の計画は以下の内容を令和3年度に実施予定としている.
1.ネオジム磁石搭載減速比1/3磁気ギア全体を低温真空チャンバー内に格納した実験(担当 原野・綿崎・田中):超電導バルク材を磁化して磁気ギアとして利用するためには,低温真空チャンバー内にて利用する必要がある.そのため,駆動・被駆動側磁石片を超電導バルク材で製作し,1磁極対(N・S)として利用し円周配置する必要がある.その状況を見越して,同軸磁気ギアを低温真空チャンバー内にすべて格納し動力伝達実験を実施する.大気圧常温下での同軸磁気ギアの設計開発はほぼ終了しているため,実験検証が令和3年8月までに終了する予定であり,その後チャンバー内配置を考慮して設置方法を検討して設計変更を12月までに予定している.
②超電導磁石の多磁極化の検討(綿崎・柳沢・原野)
超伝導材料を用いた磁石の製作については,まずは小形バルクを用いた単純な1磁極対磁石の製作を行う.その着磁方法を検討する.
⑤磁気ギア搭載2重反転ドリルプロトタイプ試作(原野・田中)
ネオジム磁石と超電導磁石の置換が今後の課題となるが,レゴリスに覆われた月面掘削を想定した小型かつネオジム磁石を用いた磁気ギア搭載2重反転ドリルの試作を行う.現在,設計開発に着手したところである.

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が40万円程度生じた理由は,コロナ禍の非常事態宣言発出や遠隔授業の実施において,出張が不可能な期間が長期化したこと,卒業研究を行う本科生,特別研究を行う専攻科生の登校も令和2年度において長期間できなかったこともあり,主として物品の購入および過渡応答磁場解析による数値計算のみに研究活動が絞られたことなどが主要原因である.
令和3年度の使用計画は,令和2年度でほぼ必要な物品購入ができたものの,未使用額40万円は同軸磁気ギア実験装置を低温真空チャンバーへ設置可能なように設計変更や試作,磁気ギア搭載2重反転ドリルのプロトタイプ試作費,超電導材料の多磁極化コイル開発費に充てられる.なお,今年度も同様なコロナ感染状況にあるが,対面授業などは令和2年度と比較して実施可能であり,本科生や専攻科生への研究による課外時間による謝金の拠出が可能である.また,令和3年度後半になれば,ワクチン接種者の増加により,感染状況が沈静化すると予想され,研究チームの参集が可能になり,旅費や謝金が利用できると思われます.
具体的な購入物品としては,校費と併せて①動力伝達実験用高トルクサーボモータ購入,②低温真空チャンバー用同軸磁気ギア実験装置改良試作費,③プロトタイプ2重反転ドリル試作費,④超電導材料・コイルの購入を実施する予定である.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 軸方向磁場による磁気歯車の動力伝達性能2021

    • 著者名/発表者名
      原野智哉,高島雄太,田中淑晴,柳沢修実,綿崎将大
    • 学会等名
      日本設計工学会四国支部 2020年度研究発表講演会

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公開日: 2021-12-27  

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