研究課題/領域番号 |
20K04235
|
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
清水 淳 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (40292479)
|
研究分担者 |
周 立波 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 教授 (90235705)
小貫 哲平 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (70400447)
尾嶌 裕隆 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (90375361)
山本 武幸 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 技術職員 (40396594)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 分子動力学 / 原子間ポテンシャル / 摩擦 / 接触試験 / 環境 / スクラッチ |
研究実績の概要 |
2021年度は、前年度に構築した分子動力学シミュレーションモデルを用い、押込み深さや試料の表面酸化膜の強度、さらにはスライダの強度を変化させた場合における、銅および亜鉛の単結晶の単結晶ダイヤモンドスライダによるすべり摩擦過程のシミュレーションを実施した。その結果、銅、亜鉛ともに、酸化膜の破壊を伴わない低荷重域では、酸化膜強度の増加に伴い摩擦係数が低下することや、一方で比較的高荷重になり酸化膜の破壊を伴うようになると、酸化膜による摩擦低減の効果が得られなくなることが観測され、現実のすべり過程においても観測される現象を再現できることが確認された。また、亜鉛(0001)面のすべり過程の分子動力学シミュレーション結果については、結晶構造の似ている単結晶サファイアの(0001)面の単溝ナノスクラッチ実験結果と比較され、単結晶サファイアの加工異方性の推定に役立てられた。具体的には、基底すべりを生じやすい方向にスクラッチすることにより、切りくずは円滑に生成されて加工効率が向上することを明らかにするなどの貢献があった。 また、シリコンウエハの化学作用援用研磨における材料除去メカニズムの解明のための分子動力学モデルの構築を目指し、シリコン表面から内部のシリコン原子までの距離に応じてアルカリ腐食によるシリコンの弱体化を表現する関数を導入し、シリコンのTersoffポテンシャルパラメータを制御するという方式により、アルカリ溶液によるシリコン表面の弱体化を表現するモデルを構築した。そして、試行的にポテンシャル制御パラメータを想定し、比較的小さい切込み深さによる試行的なスクラッチ過程のシミュレーションを試みた。その結果、シリコン表面の弱体化を表現する目算が立った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初期の計画に記載したとおりに、2020年度に開発したポテンシャル制御パラメータを導入して、銅と亜鉛のすべり過程の分子動力学シミュレーションを実施し、表面酸化膜の強度に応じてすべり摩擦現象が変化することなどを十分に解析できること、さらには、シリコンの化学作用援用研磨の初期モデルを構築できたことから、当該研究はおおむね順調に進捗していると判断できるためである。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は、当初の計画に沿って、銅、亜鉛、シリコンに対してナノすべりないしスクラッチ試験を実施し、その結果と分子動力学シミュレーションの結果とを比較する。そして、その比較結果を参照しつつ、ポテンシャル制御パラメータを見直して改めてシミュレーションを実施し、シミュレーションの精度を向上させていく方針である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスによる自粛などの影響から、(1)大半の学会がオンライン開催となり旅費が使用されなかった。(2)一部の実験やシミュレーションの補助も延期され大学院生への謝金の支払いとそれに付随する消耗品の購入を2022年度に繰り越すことになった。 それらに対する早期の対応を、検討・実施する予定である。
|