研究課題/領域番号 |
20K04237
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
木田 勝之 富山大学, 学術研究部工学系, 教授 (00271031)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 窒化ケイ素 / せん断応力 / モードⅡ型き裂進展 / 焼結助剤 / き裂開口量 |
研究実績の概要 |
当初予定していたせん断応力の実験は、試験片入手が2020年度初期のコロナ関係の事情により5か月ほど遅れたことにより、順序を後にした。先にin-situ観察用治具の設計と加工を進めて試作品を完成させた。この治具により、電子顕微鏡チャンバー内でき裂の観察を行うことができることを確かめた。 この後、この治具を用いて圧縮荷重を球に負荷することによって、予き裂を進展させた。ここでは、き裂長さと繰返し数との関係を新しい治具でも良好に観察できた。赤道に対して当初予定していた斜め方向ではなく、垂直方向に予き裂長さ260μmのき裂を導入しこれまでに予備実験の最大応力拡大係数よりも大きい約2.4MPa√mにおける実験で治具の有効性を確かめた。同時に、観察回数を増やすことによりき裂開口量の変化を詳細に捉えることで、き裂進展挙動の評価及び考察を進めた。き裂開口量は、き裂画像を分割し、分割区間におけるき裂開口面積を長さ10μmで割ったパラメータとした。繰返し数0~4.1×10^5では開口量は予き裂部では約2μm^2以下、疲労き裂部では約1μm^2以下であるのに対して、4.3×10^5では予き裂部、疲労き裂部共に約10μm^2となっており著しく増加することがわかった。このことから本試験では4.1×10^5から4.3×10^5でき裂が急激に進展し開口することが分かった。これは、R曲線の変曲点を考察するという本研究の目的に直接寄与する成果である。 次に、先端が結晶粒界近傍に位置するき裂について進展初期のSEM観察を行った。この方法では、初期き裂を任意の位置・方向に導入することができるため、90度、45度の粒子への侵入角度を得た。き裂導入方向を45度傾けた場合のき裂に対し、せん断応力と圧縮応力をき裂面に同時負荷し、上記開口量測定も含め、モードⅡ型き裂進展・停留挙動の観察を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度初期のコロナ関係の影響で、試験片入手が5か月ほど遅れた。これにより、2020年度から2021年度に予定していたin-situ観察用治具の試作・実用を前倒し、SEM観察を予定より早く進めた。せん断試験を後らせることになったが、実験・治具製作の前後の入れ替えが順調に進み、おおむね予定に従って実験を行うことができている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、任意のせん断応力と圧縮応力をき裂面に同時負荷し、下限界近傍でのき裂進展・停留挙動を評価する。2021年度以降は、2020年度に試作した治具を用いて、赤道上に発生するフープストレスを用いてき裂を進展させる実験を継続する。この手法により、せん断応力下での実験を行い、まず、き裂先端の結晶粒への侵入角度をデータ化する。その後、いくつかのき裂についてき裂進展初期のR曲線を考察する予定である。すでに開口量の分布測定に成功しているため、き裂進展曲線に対する考察を進めることができると考えている。 次に、き裂進展方向を0°から45°まで変えることにより任意のせん断応力と圧縮応力をき裂面に同時負荷し、下限界近傍でのモードⅡ型き裂進展・停留挙動をin-situ観察する。すでに述べたように、0°については結果が得られている。赤道近傍の応力分布は、すでにFEM解析で評価しており、引き続きこれにより垂直荷重の設定を行う。 予定していた、新型治具による低真空SEMのコンポジッド像観察は前倒しで成功させた。このため、プロセスゾーン内の微小き裂群の発生方向と応力負荷方向との関係は計画どおり、2021年度以降に得られる予定である。これにより、せん断応力と引張応力いずれがモードⅡ型き裂先端で優位なのか、両者のプロセスゾーン形成に及ぼす影響を考察する予定である。 最終的に、観察結果を初期き裂サイズとR曲線の特徴の関係としてまとめる。材料の結集粒サイズは既知であるため、初期き裂長さによりR曲線の変曲点が系統的に説明できることを期待している。また、初年度に行ったき裂開口量分布の解釈も定量的に進んでいるため、より詳細に変曲点の説明が進む可能性が出てきた。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度にコロナ関係の影響で、試験片の入手が5か月ほど遅れたことが理由である。今後、予定していた残りの試験片等の購入を計画どおり進める予定である。
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