昨年度に、モードII型進展がモードI型進展へ遷移する様子を十分な精度で捉えることができた。1つの具体例として、初期のき裂角度26度、(KImax、KIImax)= (0.521、2.31MPam^1/2)の試験では、2.00×10^4cycleを過ぎた段階でモードⅡ/モードⅠの混合比が1.0 (45度)を大きく下回り、そのまま破壊に至ることを観察した。本年度は引き続き、モードⅠ及び混合モード疲労試験を実施し、き裂進展挙動と微構造に注目し、走査型顕微鏡を用いてin-situ観察を行うことで、結晶粒に対する疲労き裂の進入角度と結晶粒界との相対角度と粒内・粒界破壊の関係について考察を進めた。特に疲労き裂進展経路上の結晶粒の形を同定した。さらに、同定した結晶粒の粒界に対して侵入・迂回したき裂について荷重負荷方向を基準として侵入・迂回角度を整理した。き裂がコンタクトした結晶粒の角度についても整理した。ここで、任意のき裂と結晶粒が特定の角度に集中しないように、観察対象を選定した。リガメントは結晶粒間に存在する粒界相にき裂が発生し、発生したき裂が結晶粒を跨いで繋がらなかった場合形成され、ここから不連続な表面き裂の成長はき裂先端前方の結晶粒界にき裂が発生し、それが繋がる、若しくは内部にき裂が進展し、再度表面にき裂が現れることで起こることも観察した。この知見も取り入れ、データを解析することができた。ここで粒内(G_T)と粒界(G_I)2種類の破壊形態についてHutchinsonが提案した静的条件下のエネルギー開放率の考え方(G_I/G_T)が疲労下でも使われているため、データを整理した結果、窒化ケイ素粒内と焼結助剤の影響が強い粒界破壊についてG_I/G_T の相関は明瞭ではないことが明らかとなった。今後、混合モード試験における新たなクライテリアの実験的な提案が必要と思われる。
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