研究課題/領域番号 |
20K04239
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
小野 勇一 鳥取大学, 工学研究科, 教授 (50335501)
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研究分担者 |
森戸 茂一 島根大学, 学術研究院理工学系, 教授 (00301242)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 応力・ひずみ計測 / 実験応力解析 / めっき法 / 金属疲労 |
研究実績の概要 |
前年度の研究により,銅薄膜に発生した成長粒子をXRD法により解析することにより,二軸応力比が-0.5から0の範囲であれば,主応力を計測できることが明らかとなったので,本年度はニッケル薄膜についても同様な手法で主応力測定が可能であるか検討を進めた.まず炭素工具鋼で作成した試験片に下地めっきとして銅めっきを施し,スルファミン酸ニッケル浴にてニッケルめっきを施した.ニッケルめっきは銅めっきよりも高温で粒子が成長するので,マントルヒーターにて雰囲気温度を200℃に設定して,種々の二軸応力比で繰返し負荷試験を実施した.試験終了後,ニッケルめっき表面をXRD法により解析した.ニッケル薄膜についても,銅薄膜と同様に二軸応力比が-0.5から0へ増加すると,成長粒子の配向が(220)から(111)へ変化することが確認できた.一方,二軸応力比が-1から-0.5の範囲での配向は(220)で大きな変化はなかった.したがって,二軸応力比が-0.5から0の範囲であれば,銅薄膜と同様に成長粒子の配向の違いから主応力を計測できることが明らかとなった.そこでロットゲーリングファクターにより配向度を定量化することで,主応力測定の較正式を導出した.また,前年度に銅薄膜では二軸応力比が-1から-0.5の範囲では成長粒子の配向が変化しないため,主応力が測定できないことが明らかになったので,別の方法としてX線残留応力測定装置により取得できるデバイ環を用いた方法についても検討した.すなわち,種々の二軸応力比で繰返し負荷試験を実施した銅薄膜表面をX線残留応力測定装置で解析し,デバイ環を取得した.このデバイ環に二軸応力依存性が認められたので,これを用いた主応力測定法についても検討した.しかしながら,二軸応力比が-1から-0.5の範囲での主応力測定は依然として難しいことが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の2年目の研究計画は,ニッケルめっきに発生する成長粒子をXRD法により解析し,ロットゲーリングファクターを計算することで,主応力を求める較正式を導出することであったので,ほぼ計画通り進行している.ただし,実験データ数が十分とは言えないので,来年度は実験データを増やして較正式の信頼度を向上させる必要性がある.一方で,当初予定していなかったX線残留応力測定装置を用いた主応力測定法にも取り組むことができた.この方法は現場にも運搬可能な汎用性のある装置なので,より簡便な主応力測定法を提案することができた.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,主応力測定のための較正式の信頼度を向上させることを第一目標としている.すなわち,新たな試験治具を作成して,これまでよりも二軸応力比を細かく変化させて繰返し負荷試験を実施して,銅薄膜,ニッケル薄膜共にXRD法によりロットゲーリングファクターを計算することで,より多くのデータを用いた信頼度の高い較正式を取得する.また,較正式に及ぼす応力振幅,雰囲気温度の影響についても検討する.すなわち,応力振幅や雰囲気温度を種々に変えた試験を実施して,ロットゲーリングファクターを計算する.これらの因子が成長粒子の配向度に及ぼす影響は小さいと考えられるが,もし影響を受けるようであれば,較正式の修正も検討する.
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