本研究課題では、脳波計を用いてナノシートの有する摩擦・摩耗特性と触覚記憶の関係を明らかにすることを主たる目的とした。まず、人の指とナノシート間の摩擦・摩耗特性を実験的に検討した。その際、実験に使用するナノシートをロール・ツー・ロールにより従来のスピンコート法とは異なる手法で大量に製作することを可能にした。その後、ナノインプリント法を用いてナノシートに超微細構造を付与し、そのナノシートのトライボロジー特性を実験的に解明した。微細構造パターンとそれを付与したことにより発現するトライボロジー特性については、ナノシートの有する高い凝着力のメカニズム解明および摩擦係数について実験的に検討した。これらの内容は論文として投稿した。それらと同時に、ナノシート上での指の摺動実験中に人間の脳波を脳波計を用いて測定し、脳波(触覚記憶)と摩擦・摩耗特性の相関関係を明らかにすることに挑戦したが、脳波計を用いたナノシートの触感記憶について検討することを目的とした。ナノシートを人の指で摺動させた際に脳波計を用いて脳波に変化があるか実験的に検討した結果、摺動時における指への摩擦力は直観的に感じることができるが、脳波が変化するほどのレベルではないことがわかった。何度も実験を重ねたが脳波の変化が見られないことから、方向性を変えることにした。 ナノシートはその薄さゆえに粘着剤なしで、どこにでも貼れるという特徴を有する。そこで、ナノシートの接着性を剥離試験において定量的に評価した。その結果、膜厚さの違いによって接着力が変化する傾向を見出した。
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