研究課題/領域番号 |
20K04247
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
呂 仁国 関西大学, システム理工学部, 准教授 (90758210)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | トライボロジー |
研究実績の概要 |
本研究では、急増している電気自動車分野をバックグラウンドとし、電場における潤滑油のトライボロジー特性の解明を目的とした。2021年度に、電場での潤滑油分子挙動の観察を行った。 本研究では、電場印加されたボールオンディスク小型摩擦試験機を顕微FT-IR装置に取り込んで、その場観察システムを構築し、電場における分子配向と摩擦特性の関係を検討した。オレイン酸を潤滑油とした時に、摺動面に通電すると、C=Oの伸縮振動が高波数へシフトしたことが見られた。それは潤滑油の平面構造(オレイン酸の二量体)が解離されたことを示唆した。潤滑油分子配向が起因となった低摩擦が維持出来なくなったため、通電時の摩擦係数の上昇をもたらす原因が明らかになった。一方、電場印加時添加剤の分子挙動を観察するために、含硫黄環状化合物をトレーサーとして用いた。摺動速度が速くなるにつれ、添加剤が摺動面に濃縮されやすいことが分かった。 これまでの実験結果に示すように、電場または電流印加すると摩擦係数が上昇したため、摩擦を低減する方法が求められる。そこで、摺動面に潤滑性のあるグラファイトのその場生成を提案した。潤滑油にシクロプロパンカルボン酸(CpCA)を添加した場合、摺動面に通電すると、摺動面にCpCAの開環反応が発生し、潤滑性のあるグラファイトのその場生成を促進したことが見られた。それによって、通電時の摩擦係数が著しく低下していた。さらに、電流増加に伴う、摩擦係数の低減も顕著になった。 本研究では、真空中に設置する摩擦試験機に質量分析計を取り込み、摩擦面での反応により発生する気体について、質量分析計で成分ごとの圧力変化をモニターすることができた。また、摩擦試験機に電流印加回路を取り組んで、潤滑油の分解に及ぼす電流の影響を観察した。電流の増加に伴い、潤滑油由来の水素発生が多くなったことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述のとおり本研究では、2021年度に電場での潤滑油分子挙動の観察を計画した。 計画通り本研究では、電場印加されたボールオンディスク小型摩擦試験機を顕微FT-IR装置に取り込んで、その場観察システムを構築し、電場における分子配向と摩擦特性の関係を検討した。オレイン酸を潤滑油とした時に、摺動面に通電すると、C=Oの伸縮振動が高波数へシフトしたことが見られた。それは潤滑油の平面構造(オレイン酸の二量体)が解離されたことを示唆した。潤滑油分子配向が起因となった低摩擦が維持出来なくなったため、通電時の摩擦係数の上昇をもたらす原因が明らかになった。一方、電場印加時添加剤の分子挙動を観察するために、含硫黄環状化合物をトレーサーとして用いた。摺動速度が速くなるにつれ、添加剤が摺動面に濃縮されやすいことが分かった。 これまでの実験結果に示すように、電場または電流印加すると摩擦係数が上昇したため、摩擦を低減する方法が求められる。そこで、摺動面に潤滑性のあるグラファイトのその場生成を提案した。潤滑油にシクロプロパンカルボン酸(CpCA)を添加した場合、摺動面に通電すると、摺動面にCpCAの開環反応が発生し、潤滑性のあるグラファイトのその場生成を促進したことが見られた。それによって、通電時の摩擦係数が著しく低下していた。さらに、電流増加に伴う、摩擦係数の低減も顕著になった。 さらに、真空中に設置する摩擦試験機に質量分析計を取り込み、摩擦面での反応により発生する気体について、質量分析計で成分ごとの圧力変化をモニターすることができた。また、摩擦試験機に電流印加回路を取り組んで、潤滑油の分解に及ぼす電流の影響を観察した。電流の増加に伴い、潤滑油由来の水素発生が多くなったことが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的を達成するために、2022年度に電場での潤滑油分子挙動の観察を継続するとともに、数値シミュレーションに分子挙動の解析も行う予定である。 具体的に、①せん断場における分子配向に対する電場印加の影響を解明すること:2021年度にはオレイン酸を潤滑油として評価したが、ほかの環状構造を持つ潤滑油の検討はまだ行われていない。特にベンゼン環を持つ化合物は電場に敏感であるため、電場での分子配向とトライボロジー特性の関係を明らかにする必要がある。②電場での潤滑油のトライボ分解を解明する:2021年度の研究では、印加電流が潤滑油の分解を促進したことを見だしたが、2022年度は電場での潤滑油のトライボ分解抑制方法を提案・検証する。例えば、導電性のあるイオン液体を添加剤として潤滑油に添加すること。それはイオン液体が化学的に安定であるため、トライボ化学分解が非常に少ないと考えられるからである。③数値シミュレーションを用い、電場での潤滑油のトライボ化学分解や、分子挙動等を解析し、実験結果にフィードバックする。
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