研究課題/領域番号 |
20K04249
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研究機関 | 鶴岡工業高等専門学校 |
研究代表者 |
荒船 博之 鶴岡工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (90707811)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ポリマーブラシ / トライボロジー / 界面分析 |
研究実績の概要 |
本年度はループ型濃厚ポリマーブラシの界面構造評価にあたりAセグメントにポリブチルメタクリレート(PBMA)、Bセグメントにポリエチレングリコール(PEG)を有するABA型トリブロックコポリマーPBMA(3.6k)-PEG(4k)-PBMA(3.6k)をPBMA基材に対して10wt%導入した薄膜サンプルの中性子反射測定の解析を行った。重水界面におけるサンプルのフリンジパターンから解析を行ったところ、重水界面に形成されたPEG層の膜厚は14 nmと算出された。半分に折れ曲がったPEG 4kの伸び切り鎖長が15nm程度であることを考慮すると、得られた値はPEG 4kがループ形状かつほぼ伸びきり状態に近いブラシ層を形成していることを示唆している。また得られた膜厚はPEG 2kの直鎖型ブラシと同等の膜厚であり、PBMA-PEG-PBMAがループ型構造を有しながら高密度なブラシ層をPBMA-重水界面に形成していることを意味し、興味深い結果となった。 また本系の実用化への検討にあたりポリジメチルシロキサン(PDMS)およびPEGからなるトリブロックポリマーPDMS-PEG-PDMSの合成を試みた。具体的には水酸基末端を有するPDMS-OH(PDMS分子量1k)およびOH-PEG-OH(PEG分子量4k)の水酸基間をスズ触媒を用いてジイソシアネートにより結合し、PDMS-PEG-PDMSを合成した。得られたトリブロックコポリマーおよび対応するジブロックポリマーPDMS(1k)-PEG(2k)をPDMS基材内に10wt%導入し、接触角の経時変化および摩擦測定を行ったところ、PDMS(1k)-PEG(2k)では顕著な接触角低減および摩擦減少を示したのに対し、PDMS-PEG-PDMSではいずれもあまり大きな変化は見られなかった。PBMA-PEG-PBMAの系との違いから、現在はリンカー部位の影響を考慮し別ルートからの再合成を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トリブロックコポリマーのポリマー基材への導入によりループ型かつ高密度なポリマーブラシ層が界面に形成されている実験的なデータが得られた。また実用系としてポリジメチルシロキサンへの展開も可能となり、今後のさらなる分子設計と界面構造評価により実用に耐えうる自己修復性の潤滑材料への展開が期待される
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる本年度はこれまでに得られた知見のもと、種々の化学構造を有するマルチブロックコポリマーにより形成されるポリマーブラシの界面構造および潤滑特性を明らかにしていく。具体的にはPDMSをAポリマーとして有するAB型またはABA型マルチブロックコポリマーについて中性子反射、接触角、摩擦測定により固液界面における界面構造と潤滑特性を明らかにする。また、自己修復速度や耐久性についても摩耗後の回復挙動の検証から明らかにしていく
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