これまでの研究によりポリブチルメタクリレート(PBMA)およびポリエチレングリコール(PEG) からなるABA型トリブロックポリマーPBMA-PEG-PBMAがPBMA-PEGに比べ優れた特性を有することを摩擦測定から、界面でのブラシ形成について接触角測定や中性子反射法などを活用して明らかにしてきた。並行して、実用系の展開としてポリジメチルシロキサン(PDMS)からなるシリコーンゴム系での検討を行ってきた。 本年度は自己修復型ポリマーブラシの界面構造および自己修復挙動について検証を行った。AB型ジブロックポリマー PDMS-PEGを添加したPDMS基板についてJ-PARCで重水界面での中性子反射試験を行った。その結果、PEG膜厚は伸びきり鎖長に近い15nm程度と算出され、重水界面において高密度かつ伸長した濃厚ブラシ状態であることを確認した。またグリセロール90wt%溶液中での平滑ガラスによる摩耗処理後の摩擦測定から、対抗面への摩耗ブラシの吸着および自己修復が示唆された。 また昨年度PDMSメタクリレートのリビングラジカル重合により合成したPDMS(1.6k)-PEG(5.5k)-PDMS(1.6k)についてグリセロール水溶液中で特性向上が得られなかった。これはPDMS側鎖が600-700程度の分子量を有する櫛型構造の影響が考えられる。そこでリビングアニオン重合により直鎖状のPDMSを有するPDMS(0.9k)-PEG(4k)-PDMS(0.9k)を合成したところ、先のPDMS(1.6k)-PEG(5.5k)-PDMS(1.6k)に比べ低摩擦を示し、側鎖構造による潤滑特性の違いが明らかになった。
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